魔法武器
今日の朝食はこの間と同じナン風パンに生野菜サラダ、但しジャムは柑橘系
でアールグレイ風紅茶、あまり品種幅を限定しないのは、どちらも大好きな
系統なので多少味に差が在っても美味しく頂けてしまうからだ。
昨日のお風呂で疲れが取れたのか、日が昇る頃に目が覚めてしまったので、
朝食の前に村内を10往復(約5キロ)の軽いジョギングをしてから朝食を
取った。
どう言う訳か知らないが、体力の回復が著しくもう殆ど前と変わらないかそ
れ以上の感じさえしている部分も在ったりしている。(やっぱり健康第一だ
ね)今日はまず食休みも兼ねてまだ使った事の無い6連射式ボーガンを家の
右側の練習場所で試射と装填訓練をしておくことにした。
実は朝食の時、ユリアにボーガンの使い方を聞いておいたのだ。
『全然使って無いから忘れちゃったわ」と言ったら教えてくれた言えばやっ
てくれる面倒見の良い姉である、言わなきゃ何にもやらないが。
まぁそれは置いといて、ボーガンだがはっきり言って矢の装填以外オートで
ある、全てが魔法制御、トリガーを引くと矢が射出されトリガーを放すと弦
が引かれリボルバーが回転する。
普通のボーガンと違う所は矢に羽が付いていない事とグリップを握っていな
いと魔力が供給されず弦も引かれないしリボルバーも回らない、矢羽は射出
された瞬間に魔法で生成される。
後はあたしの腕次第だが、実の所この家の右側は本当に昔からの練習場所で
わら束?や、的などの練習用具が揃っている、木の幹などは結構傷だらけだ
ったりしている。
どんなものか先ずは一本試し撃ち・・・で、30センチ位の幹が大穴で貫通
(怖!!)あまりの威力にビビっているとあたしの部屋の窓から様子を眺め
ていたユリアが声を掛けてきた。
『あ~忘れてたけど上に縦長のサイトが有るでしょ?それを立てて撃つと自
動追尾になるから』
意味が良く飲み込めなかったので詳しく聞いてようやく理解した。
サイトを立てて標的を目視しながら何処へ向けて撃っても射程内であれば魔
力の分配の関係で威力は半減するが本人に追撃の意思と魔力が有る限り無限
に追尾するらしい、威力に関しても本人が込める魔力量に依存するそうだ。
裏技があるらしいが面倒臭さがって教えてくれなかった。
今日までユリアを観ていて判った事が一つある、どうやら”ユリア”と呼ばれ
た時より”姉様”と呼んだ時の方が機嫌が良いみたいだ。
(これは使えるな、フッフッフッ)
まだ、朝の内なのでボーガンはこれ位にしレイピアの練習に切り替えた。
昨日は”切る”練習をしたが、きょうはそこへ”突く”を織り込んで練習してい
く、本来レイピアは”突く”事を主眼に置いた武器だ、”振る”より”突く”の方
が断然剣速は遅く実戦では”一撃”よりも”連撃”がものを言うので連撃メイン
の練習をひたすら昼まで続けてやった。
途中で”母様”と”姉様”が出かけて行った様だが何も言われなかったのでその
まま練習を続け昼を迎え何か食べ物を探そうとキッチンへ行きかけたがテー
ブルの上に何か有るのが目に付き被された布をめくってみるとサンドイッチ
だった。
ナンに生野菜とハムを挟んで塩を振り切っただけだが汗をかいた身に塩味は
妙に美味しく感じられる。
飲み物も用意されていて、これは中身が何か直ぐに解った。
コップに蓋付きでコップの周りにキラキラとした魔法が纏わり付いている、
コップを掴むと魔法はすぐに消えたが手に冷たさを感じ冷蔵魔法だと理解し
た。
蓋を開けて一口飲むとやはり炭酸水だった。
(流石は母様だわ)と独りニマニマしながら食事を進めて行く。
午後も”走”攻”織り交ぜた練習をこなし、空がオレンジ色に染まる頃に手荷
物を持って二人は帰って来たのだった。
魔法らしい魔法を使わない魔法使いは今暫く続きます。