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実演

今はAM8時40分、リドの里の酒場で円卓を8人で囲って朝食を摂っている。

そんな中、セリアがボソッと言った。

「貴女達、私に隠し事してない?」

「・・・・何の話をしてるの?」

エルミーが食べる合間に返事をしてきた。

(おかしい、反応がまるで無い、知っているなら今の一言に誰かしら反応する

はず、誰も反応しないと言う事は、このメンバーは誰も知らない?・・・と、

言う事は移動中にトレーラーのメンバーで話を着けたと言う事か・・・ニナな

ら有り得るな、まぁ、アルリアに居ても暇だから付いて来たのだろう、仕方が

無いか・・・・・・いや、これは使えるな?ニナには良いお灸になりそうだ、

フッフッフッ)

食事をしながらほくそ笑むセリアを見て、ドン引きなメンバー全員であった。


リドの町を出立したのはAM9時過ぎ、ベリー山脈縦断には1時間程掛かる、

酒場の店主の話では、渓谷と言う程狭くは無いそうだが、進むにつれて草木が

幅を効かせてくるらしい、森林への入口は1個所、そこから2リーク程は開拓

村までの馬車道が今は有るとの事で、一先ずそこを目指す。


リドの町から山裾までは草原の中に続く”道”と呼べるものだった、日も高く無

いこの時間帯、渓谷に入れば直ぐに日陰だ、殆ど平地を走るかの様なこの渓谷

は進むにつれて暗くなると共に切り立つ断崖の高さが高く成っていく。


草木も生えず剥き出しの岩場に様相を変えた頃、少し開けた場所へと差し掛か

った。

目の前には、何処から持って来たのか間伐樹木で組んだ様なバリケードとお馴

染みのライカ人が20人程、渓谷に入って30分、南方から持って来たにしろ

30リークは運ばなければならない距離にバリケードは有る、ご苦労な事だ。


やれやれと溜息を吐いた所でリーザが話掛けてきた。

「どうされますか?」

「どうもこうも押し通るしか無いわね」

折角思い付いたニナの脅しネタをこんな所で浪費したくは無い、追い着かれる

前に方を着ける為、エルミーを除く武闘派全員が降車すると、それに気付いて

ライカ人の男がフレンドリーな口調で近付き声を掛けて来た。

「やぁ、お嬢さん方、突然で悪いがここから引き返して欲しい、ここから先の

未開地はライカ国が占有作業中で通す訳にはいかんのだ」

それを聞いたセリアが切り返した。

「それは聞き捨て成りませんね、領土で無いのであればこの大陸では往来を保

障している筈です、領主が告知していない現状では通行を阻害する権利など、

貴方達には有りませんよ?」

「そこを真っ当に突かれると痛いんだが、そう言う訳にはいかなくてね」

「では、押し通る”と言ったらどうされますか?」

「余り遣りたくは無いんだが、お嬢さん方の綺麗な服が赤く染まる事に成るだ

ろうね」

「”余り遣りたくは無い”?ライカ人にしては控え目な発言ですね?」

「こっちにも事情ってもんが有るんだ、お嬢さん方に恨み辛みなど全く無いん

だ、出来る事なら争いたくは無いのさ」

やる気の無い相手を斬り捨てる訳にもいかずに悩んだセリアは解決策を提示し

た。

「では、貴方方が全滅した事にして私達を通して貰うと言うのはどうでしょう

か?」

「それだと夕方に伝令を出せないから全滅か逃亡と判断されて人質が殺されち

まう、全滅で無くとも、もう役に立たないと判断されれば同じ事さ」


「人質ですか・・・それは困りましたね、それで人質は何処に?」

「この先の集落さ」

「人数は?」

「3人」

「敵の規模は?」

「ザッと100人」

「私達が助けると言ったら?」

「それは無理だろう、幾ら何でも」

セリアは辺りを見廻すとバリケードを作った時に切り落としたらしい枝を見つ

けてそれを指差しながら男へと質問をした。

「貴方はあの枝を放り投げたら幾つに切れますか?」

「いきなりだな・・・・それは、この枝の事かい?」

セリアが指さす枝を拾い揚げた男は繁々と見ながら呟いた。

「・・・精々4本だな」

「では、私がそれ以上出来ると言ったら?」

「アッハッハッハッハ、それは幾ら何でも盛り過ぎだろう!」

腹を抱えて笑う男に、表情も変えずセリアは言い放つ。

「では、お見せしましょう、その枝を私に向けて放り投げてください」

「ほぉ~、では見せて貰おうか」

男は信じて居ないで有ろう口振りで薄ら笑いを浮かべたままセリアへと枝を放

り投げ、セリアの剣技を見守った。


瞬間、抜刀と同時に魔法を発動したセリアは、男が一呼吸する間に既に剣を右

へと流し持っていた。

二呼吸目には、バラバラに成って堕ちる枝が、スローモーションと成って男の

視界に映っていた。

そして枝が地面に散らばった後も、男は心臓の鼓動以外の動きを、数瞬の間止

める事に成ったのであった。




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