一致団結
今日の南方行きの時間は早い、順調に行って10時間だがそんな事はあり得な
い、元から道など無い所が半分は有るのだから。
短い睡眠時間に文句も言えず、重い体を引き摺る様に自宅を出立したのは朝の
5時、従業員宿舎に泊まるメンバーを迎えに行き、ペースを抑える様指示を出
してからリーザへ運転手を頼んだ。
ロゼッタだけは昨日の内に出立している、ティアの意向を汲んでの事だが元々
護衛と言う立場では無いし姉様の従者なのだから付き合わせる事も無い。
乗り込んだメンバーは、助手席にエルミー、ミドルセンターに私、左にフラン
カ、右にアンジェ、パッセンジャーにミリアとセリ、足場にクッションを敷い
てミラが座った。
「ミラ、それで大丈夫?」
「何も問題有りません」
気遣う私にキッパリ言い切られては、返す言葉も無く出立した。
ニナが選んだ人選に文句は言わないが、12歳には少し辛いポジションかも知
れない。
取り敢えず目指すは、父様の護衛のテオの古里でもある南境の町リド、クラー
シュ氏族が治めるエルフの里、とは言っても6割以上は人族だ、この町が出来
た元々の由来がダンジョンの管理が目的なので、近くに水のダンジョン”アク
ア”が有る。
そこまでの時間は4時間弱、朝食には丁度良い時間に成る、足りない睡眠を補
う為にセリアは速攻で眠りに就いた、その為の座席位置なのだから。
「どうするんだ、ニナ?」
セリアを見送るニナにアリエスが問い掛けた。
「直ぐに出ましょうか、セリア様はお休みに成られた様だし」
「お前そこまでハッキリ判るのか?」
「貴女も馴れれば判る様に成るわよ?」
「いや、何となくは判るんだが今一確証が持てないと言うか」
「あぁ、それは如何にセリア様を愛しているかの差ね」
腕を組み、見下す様な視線でアリエスを見て鼻を鳴らすニナにカチンと来たア
リエスが静かに噛み付いた。
「じゃあ、お前はセリアをどれだけ愛していると言うんだ?」
「私とセリア様の間には、誰にも侵す事の出来ない固い約束事で繋がっている
のです」
「約束をしたからと言って愛が深いとは言えないんじゃないか?お前はそうか
も知れんがセリアは”約束だから”と言うだけで守っているのかも知れんぞ?」
それを聞いてムキに成ったニナはアリエスへと強く言い返した。
「そんな事は有りません!そうで無ければあんなに長時間私を攻めたりは!あ
っ!」
その一言に気付かないアリエスでは無い。
「ほぉ~~~お前はセリアに攻めて貰ったのか~、皆今の聞いたよな~」
メンバー全員がコクコクと頷いている。
「まぁ、今は時間も無いから後でジックリ聞かせて貰おうか、なぁニナさんよ
?」
虚空を見つめてダラダラと汗を流すニナだが、今は都合が悪いので纏めに入っ
た。
「そ、そうですね、今は時間も無いですから後でお話します、皆さんもそれで
良いですか?」
全員が頷くのを見て、思考を一気に切り替えたニナは号令を掛けた。
「では、これから追跡を開始します、どんな危険が潜んでいるか判りません、
ベリー山脈以南は特に気を付ける様に、食糧は各都市通過時に調達します余り
飛ばしませんが、遅れる事の無い様に気を付けください、では、出発します!」
結局全員が走歩で追いかけるのであった。