眷族の願望
休日のセリア商会ブラント従業員宿舎206号室。
「ねぇフローラ」
「何ですか?エレン」
「やっと私達の出番が来るかしら?」
「セリア様は暫く作業場に缶詰めとか言っていたので暫く先じゃないですか?」
「そう言えば昨日また新人が来たわよね?」
「えぇ、パメラとか言ってましたね、ラウラの姉らしいですよ」
「またグータラなのかしら?」
「性格は正反対だと聞きましたが」
「剣の腕は如何なのかしら?」
「さぁ、あの姉はまだセリア様に剣を創って貰っていないので明日の朝練に参
加しないかもですね」
「でも、ここ数日で一気に人数が増えたわね」
「今はこの宿舎も19室埋まって1室しか空いてないですからね、今度”マンシ
ョン”とか言う建物に建て替えるみたいですよ、この間アルリアのセリア建設
が見に来てて、その時聞いたんですけど、”地下駐車場”とかも造るかもとかで
時間が掛かるらしくアルリアのマンションに仮住まいになるかもしれないとか
言ってましたけどね」
「皆で一緒に移るのかしらね?」
「それは怪しいんじゃないですかね、そう言えば今度全員出席の合同会議が有
るのは聞いてますか?」
「何それ?聞いて無いわよ?」
「まだ告知してないですからね、セリア様じゃ無くてティアさん主催みたいで
すよ」
「あ~セリア様今忙しいものね」
「会社設立なんで7日位掛かる様な事言ってましたね」
「社長はカリアスなんだってね」
「みたいですね、製造業なんで」
「私達がやってる各部門のローテ仕事って幹部候補の伏線かしら?」
「間違い無くそうでしょうね」
「フローラは何の仕事に興味が有るの?」
「私は今度出来る自動車販売の”デーラー”とかに興味が有りますね、エレンは
?」
「私は時計販売ね、デザインが様々で見ていて飽きないわ」
「でもいくら仕事でもあそこだけはやりたく無いわね」
「あぁ~”ホームセンター”ですか」
「だって品出しと在庫管理と発注と掃除ですもの、仕事に誇りを持ちにくいわ」
「それは判る気がしますね、私もそうですから」
「今この商会って何部門有るのかしら?」
フローラが指折り数えている。
「え~と、貴金属、通信機器、金融、雑貨、建設、サービス、傭兵、医療コン
サル、護衛、自動車、冒険、福祉、服飾の13部門です、食品と流通が入れば
殆ど制覇じゃないですか?」
「ミレーヌ商会超えてるんじゃない?」
「そう言われて見れば軽く超えてますね」
「大陸一の大企業ですか、次は国家経営かしら?」
「世界制覇じゃないですか?」
2人は顔を見合わせ笑っているが、掌握されていないからこそ
この程度で済んでいる2人であった。
フランカはティアの指示で新人14人を連れて冒険者ギルドへと登録に来てい
た。
登録を終え、ぞろぞろと歩きながらフランカがバネッサへと話し掛ける。
「ねぇ、ねぇ、バネッサはセリア様が好きなの~?」
「えぇ、大好きですわよ」
「何処が~?」
「それは全てですわ」
「全てが好きならセリア様に言われたら必ず遣り遂げるんだよね~?」
「当然ですわ、私にとってセリア様が全てですもの」
「頑張って隣に立てる様になれって言われたんだよね~?」
「そうですわ、公言して、自分を奮い立たせる糧にしたのです」
バネッサの教導担当のフランカは中々上達しないバネッサにドーピング剤をぶ
ち込む事にした。
「あたしもね~鍛練始めた時はB-だったんだけど~Sになったんだ~そした
らね~セリア様チュ~してくれたんだよ~天国に居るみたいだった~」
「な、何ですとぉ~!天国に逝かせて貰えるのですかぁ~!」
「頑張ればセリア様からちゃんとご褒美が貰えるよ~?」
「ガ・ン・バ・リ・マ・ス!」
鼻息荒くガッツポーズをするバネッサにほくそ笑むフランカ。
頼めば断らないセリアの優しさにつけ込む、おっとりしている様で抜け目の無
いフランカである。