新会社設立と異色の新人
とうとう見ない振りをしていた事がやって来た、ミレーヌ商会からの車の発注
だ。
注文はトラック、乗用車を選ばないのは流石商人、御陰で今日はセリア商会ブ
ラント支店の作業場に缶詰めになっている。
乗用車のフレーム兼用なので、上物だけの製作だがプログラムだけで2日は掛
かる。
箱だけなら良かったのだが無魔法者用のバッテリー搭載車で長距離移動仕様だ。
給湯器と違いバッテリーを5連装、流石に時間が掛かる。
昨日連れて来たパメラを構っている暇も無い、ティアにお任せ。
これを機にブラントにセリア自動車を設立しカリアスを社長に据える事にした。
カリアスのやる事は場所の選定と買収、従業員の確保、様は丸投げだ。
それ位やって貰わねば私が割に合わない。
現在プログラムしているのはトラックと中、小型の乗用車、3バリエーション
で工場の製造ラインは5本、合計9車種となり日産1台の予定だ、それに併せ
て各都市のセリア商会にバッテリーパック交換スタンドを併設予定だ。
当分は社用車配備だが、市販車が増えれば行政と交通規則の擦り合わせも出て
くる、道路整備に信号機開発設置も視野に入れなければならない。
前回トレーラーでカリアスに指摘された細部の造り込みもしなければ成らない、
言うは安し、行うは難しとは良く言ったものだ。
パメラは昨晩遅くに到着した為ラウラに会うのは今日の朝になったのだった。
「あっ!お姉ちゃん!」
「ラウラ!」
「「生きてて良かった!!」」
2人はお互いにヒッシと抱き合っている。
「セリア様から聞いたわよ、貴女瀕死だったんですって、あの時てっきり死ん
だかと思ってたわよ?」
私も良く生きてパスカルに辿り着けたと思ったけどそこで力尽きちゃったの、
周りの人も見ているだけだったし、もう駄目なんだと思ってたんだけどセリア
さん、様に助けられちゃった」
パメラに付き添って来たティアに睨まれてラウラは様付けへと言い直した。
「私も魔物に追いかけられまくって、結局クルト近くまで鬼ごっこですもの、
流石に限界だったわ、街道を見つけた途端に倒れ込んだ所を、セリア様の”く
るま”に跳ね飛ばされて瀕死の重傷になっちゃったのよ」
「え?そうなの?流石双子ね、セリアさ、様との出逢いで2人で重傷なんて」
「双子だから1人だけ痛い目に会うのはバランスが悪いのかしら?それとセリ
ア様に聞いたわよ?貴女鍛練に出たがらないんですって?」
「え?出てるわよ?ちゃんと、セリシアと一緒に」
「あら?セリシアも居るの?だったらどうせセリシアに引っ張られて行くだけ
なんでしょ?」
「流石お姉ちゃん、バレバレね、でもここじゃ私はお姫様じゃ無いからセリシ
アもタメ口だし、向こうに居た時より当たりがキツいのよね」
「何言ってるのよ、見捨てられないだけ有り難く思いなさい、それで無くても
貴女は不精なんだから皆さんに嫌われちゃうわよ?」
「ほぉ~お前と違って出来たお姉さんだな、生まれた時に良い所を全部持って
いかれたんじゃないか?」
鼻で笑いながら絶妙なタイミングで突っ込みを入れるティアである。
「・・・・・・」
コンプレックスを狙い撃ちされ、グーの根も出ないラウラであった。
「それと、向こうでお父様とやらかしたってさっきニナって人から聞いたわよ
?」
「それ、を言われると・・・」
どんどん小さくなっていくラウラである。
そしてこのパメラと言う人物はセリア商会のオクタグラムの1人として剣の腕
とファッションセンスで異才を放つ存在になるのである。