表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
142/590

アバドン

アバドンに到着したのは14時半頃、予定より遅い、速度を落とした影響だ。

ゴブリンの司令官は領主館へと報告に行っている、ハッチを開けっ放しで走

っていたのも有るがオーガの里より格段に寒い、この時期にしては寒過ぎる

気もするが。


そんな時、リベリオで情報収集をしているカリアスから連絡が入った。

「私だ、どうした?」

{攫われた1人が見つかりました}

「何処に居た?」

{帝国の裏組織のボスの所です}

「連絡を寄越したと言う事は時間が無いのか?」

{はい、奴は6刀使い、服の買い替えに出て来た所を確認したのですが、奴

が儀式の一環にしている行為なので、下手をすると最悪の事も考えられます}

「お前は今何処に居る?」

{情報を追って帝都に居ます}

「なら其の侭監視していろ、明日には帰る」

{了解しました}


ゴブリン領主館内、領主執務室。

「ゲオルト様、私は東門守備隊長ベルゲと申します、お知らせしたい議が有

りお伺いしました」

「東門守備隊長が直接来るとはどう言う議事だ?ん?お前その股間はどうし

た?女などこの場には居ないぞ?」

「その事も含めてお話がございます」

「あぁ、判った、話してみろ」

「アルリア戦役での敵勇将がゲオルト様にお目通りしたいと参っております」

「何?!・勇・将だと?」

「はい、間違い御座いません、手配書の荷車も確認致しました、しかも女で

す、お目通りが叶わなければ引き上げると、館の外に返事を待たせておりま

す」

「何と!ここまで連れて来たのか?!」

「はっ!戦闘の意志は無いが、通れなければ殲滅してでも通ると言われたも

ので」

「よく他の兵士達が襲い掛からなかったな」

「あの様なこの世の物とは思えない殺気を浴びせられて襲い来る兵士など1

人も居りませんよ」

「それ程の手練れか・・・」

「どう為さいますか?」

「・・・判った、会おう、戦闘の意志が無いのならば問題は無かろう、ここ

までお連れしてくれ、其れからこの事は呉々も他言無用でな」

「了解しました」

ベルゲは恭しく礼をすると退室していった。


この領主執務室に迎賓用のテーブルセットは無い、有るのは議事会議用のテ

ーブルセットだ。

6脚の椅子の片側にセリアを挟む様にニナとティアが座り後ろにはサラが控

えて居る、セリアの向かいにはゲオルト、紅茶を給仕しているのは、身成は

良いが人族の奴隷だ。

「申し訳無いね、人族の前で攫った奴隷に給仕をさせるのは心苦しいのだが

我が一族に給仕をまともに出来る者は居ないのだよ、せめてもの詫びとして

彼女達には手を付けては居ないのだがね」

「ゲオルト様、お心遣い有り難う御座います、状況を鑑みましてそれは致し

方の無い事、今回それを非難する為に参った訳では有りません、それに彼女

達を魔法で護っていらっしゃるではないですか、随分高等な阻害魔法ですね

?」

「まぁこんな種族だからね、そう言って貰えて助かるよ、まぁ熱い内に一口

飲んでくれ給え、勿論毒などは入っていないので安心して欲しい」

そう言われて飲もうとするセリアを制止しニナが飲んだ。

それを見てセリアが詫びを入る。

「申し訳ありません、この者の仕事を奪う訳にはいきませんもので」

「ええ、理解しております、お気に為さらずに、それで本日はどう言った御

用件で?」

「そうですね、他愛も無い話からで申し訳無いのですが、この街の名はアバ

ドンで間違い無いでしょうか?」

「は?確かにこの街はアバドンと言いますが?」

「ではその名の由来は御存知でしょうか?」

「いいえ、歴史が古い事だけは分かりますが、由来までは」

「そうですか、ではこの地に”虫”に関する名前が付いた物や場所などは在り

ますか?」

「其れならば1つ在りますね、蠍塚と言う古塚が在りますが」

「やはり在りますか・・・ゲオルト様はこのゴブリンと言う種族に1番危惧

している事は何でしょうか?」

「それは、やはり子孫を同族間で遺せない事でしょうね、他種族を見れば襲

い、殺して食べて、犯して、産ませて、いつまで経っても他種族の遺伝を受け

継げず進化の兆しさえ見えない種族に未来は有るのでしょうか?」

「では、それが解決するかも知れないと言ったら信じて頂けますか?」

「!?・・それは!・・どう言う事ですか!?」

驚愕し立ち上がるゲオルトを歯牙にも掛けず紅茶を嗜むセリアは言葉を続け

た。

「この地には貴方達種族に対して強力な呪いが掛けられているのです、解決

する迄は時間が必要に成りますが、貴方に会ってみて解決出来ると確信しま

した、但し貴方以外は滅びの道を歩むでしょう、奈落の底はまだ来ていない

のです。

何故なら貴方は貴方の子孫を護る為に、襲い来る同族を殺さなければ成らな

くなるからです、その運命に抗う積もりが有るのなら私は貴方に力をお貸し

します」

「ちょ、!ちょっと待ってください!!貴女の言っている意味が理解出来な

いのですが?」

「そうですね・・・条件付き、とでも言いましょうか、貴方が愛した方とな

ら女性が産まれる様になるでしょう、今のこの地で産まれた同族は貴方の子

供をを同族とは認識出来ないのです、但し子孫繁栄は古塚が有るこの地でな

ければ成りません、数多の敵と成った同族の中に貴方の家族が孤立すると言

っても過言では無いでしょう、護り、戦い、そして生き残らねば成らない、

それが出来るのなら呪いの頸木を解いて差し上げます」

「そんな・・・・」

「貴方は既に解っていらっしゃいますよね、この呪いの中で生まれた種族に

未来が無い事を、そして滅ぼさなければ未来が切り開けない事も、そして頭

で理解していなくても貴方はそうなる様に動いた、同族を滅ぼす為に」

「!!・・・」


「・・・・消極的では有りますが、他に手が無い訳では有りません。

私とて、全ての呪いを無効に出来る訳では無いのです、出来る事なら全てを

救いたいと言う思いは有りますが、其れが出来ない程の強力な呪いなのです。

解ける所は解き、隙を突ける所は突いて、光明が見えたに過ぎません、貴方

達のご先祖が何を遣ったのかは知りませんが、”私達が犯した罪”の贖罪とし

て手をお貸しするのです」

その言葉を聞き、セリアの頬に一筋の雫が流れ落ちるのを見たゲオルトは理

解してしまった今目の前に居る女性がどの様な人物なのかを。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ