更なる予定変更
昨日は夕食前に起きたニナとラウラの1戦の御陰で思いっ切り夕食の時間が
遅くなった、言うまでも無くオーガ親子の平身低頭騒ぎのせいだ。
長時間謝られてもお腹は膨らまない、程々にして欲しいものだ。
今日は朝から私以外は市街地全域の討伐に向かった、私も出たかったのだが
全員一致で留守番役を”押し付け”られてしまった、この屋敷に居る事を居た
たまれなく思っていたのは私だけでは無かったと言う事だろう。
今の時間は朝の9時過ぎ、迎賓室にてメイドさんに紅茶を煎れて貰っている。
手慣れた所作に感心するも使っている茶葉は一般品、だがメイドさんの腕前
は超一流だった。
茶葉の旨味を極限まで引き上げていた、努力と研鑽が実を結ぶと言う良い実
例だ。
ラウラより余程このメイドさんが欲しい位だ。
(ダメ元で一応声を掛けておくか)
そんな一流品と引けを取らない程に高められた紅茶を嗜んでいる時にラウラ
がやって来た、来場一番また頭を下げている。
「昨日はあの様な愚行を晒してしまい、誠に申し訳ありませんでした」
「ラウラ”さん”、いい加減謝るのを止めて頂かないと私の方が居心地が悪く
成るのだけど?」
「それは重々承知しているのですが、自分の至らなさを痛感してしまいまし
て」
「そう言えばそんな所はお父様とそっくりだったわね、流石親子ね」
ガッツリ凹んだラウラは其の侭黙ってしまった、昨日の空腹感の仕返しを済
ませたセリアはキッパリ話題を切り替えてやる事にした。
「所で何の用なのかしら?」
「はっ?!そうでした、セリア様はこちらへ何時まで逗留なさるのかお聞き
したく参ったのですが?」
「今日の昼過ぎには帰るわよ?」
「えっ?そんな性急な」
「だって討伐が終われば用が無いじゃない?」
「それはそうですが・・・」
「そうだわ、貴女に一つ聞こうと思っていた事が有るのだけど良いかしら?」
「はい、私に判る事でしたら何なりと」
「このオーガの里近辺の道路事情を教えて欲しいのだけど?」
「と、言いますと?」
「タブリスからこの里までは通って来たから判るけど、どの道が何処へ行く
のかを知りたいのよ、それとこの里の名前ね」
「これは失礼致しました、この街はグリゴリと言います、ここから北西へ1
62リークに第2の都市アルメンが有ります、アルメンから東へ324リー
クでレプラカーンのダネルへ、アルメンから西へ348ルークでゴブリンの
里アバドンへ、そしてこの里より西へ432ルークでやはりアバドンへと至
ります」
「成る程、グリゴリにアバドンね・・・ねぇラウラ”さん”この地にシェムハ
ザとか言う名前の所は有るかしら?」
「はぁ、確かにシェムハザと言う祠と、他にも19個程の祠が有りますが」
「そうなの・・判ったわ有り難う、メイドさん、紅茶をもう1杯頂けるかし
ら?」
そう言うとソファーに沈み込む様にしてセリアは黙り込んでしまった。
痺れを切らしたラウラがセリアに声を掛ける。
「あの・・・」
「ん?あぁ御免なさいね、少し考え事をしていて・・」
セリアはラウラをソファーへと誘う事も忘れて思考の海に没頭していく。
紅茶が温く成る程の時間が過ぎた頃にセリアは口を開いた。
「決めたわ、今日の昼過ぎにアドバンへ出立します」
セリアは温くなった紅茶を一気に飲み干すと立ち上がってメイドさんへ一言
掛けた。
「御免なさいね、1番美味しいタイミングで飲んで挙げられなくて」
「お気遣い、有り難う御座います」
セリアはそれを聞くと足早に駐車場へと向かった。