予定変更
結局今日の朝は皆の注目を集める中、自分で起きた。
全員が残念そうな顔をするのは止めて欲しい、私は景品では無い。
今日は帝都支店へ引き揚げるだけなのでゆっくりと朝食を摂る、今は朝8時
頃、朝食までが長かったが。
一応レベッカとクラリスは通常業務に戻って貰う事にした。、上への報告は
1クッション入ると言う事なので私の眷族に成っているのはバレないと踏ん
での事だ、例えバレても処分出来ない理由を考察すれば手出しはしないだろ
うと踏んでの事だ。
帰りの私の指定席は助手席、昨晩の睡眠不足のツケはキッチリ払って貰う、
私は眠いのだ。
出発は9時、パスカル通過予定時刻は10時40分頃、順調に旅程を熟しパ
スカルに到着寸前でセリアのスマホが鳴った、帝都の奴隷市場の支店長から
だ。
「はい、私だ」
{お疲れ様です、本日出品予定の持ち込み品に指示の有りました”もの”が入
って居りましたがこちらで落札して宜しいでしょうか?}
「そうか、じゃあそうしてくれ、一応何も無ければ今日中にそちらへ帰還予
定のつもりだ」
{了解です}
通信中にパスカルの門は見えていたが、明らかに入門待ちでは無い人集りが
出来ていた。
車を停めているアリエスが私を見ている。
それだけで言いたい事は判った。
「あそこへやって」
車を降りて人集りの中へと割り込んで行く。
「行き倒れ?随分良い身成ね、怪我をしているわね?ん?!」
見た目は人だが彼女には人とは明らかに違う物が額に付いていた、角だ。
「退いてくれ、私が診る」
群衆を押し退け彼女の傍らへと腰を降ろす。
近くで見ていた男が声を掛けた。
「多分もう駄目だと思うぞ?」
男の言う通り彼女は瀕死だ、後10分も遅ければ手の施し様も無かっただろ
う。
「打つ手はこれしか無いわね」
セリアは彼女の胸に掌を当てると魔法を発動した。
淡く煌めく光りの粒が彼女の中へと吸い込まれて行く。
魔法の終息を確認し治癒魔法を発動すると群衆がどよめいた。
袈裟に斬られた傷痕が逆再生する様に治っていく。
群衆が見守る中、数瞬の間を置いて彼女は目を開けた、まだ視界が定まらな
いのかセリアの顔を手探っている。
「私が判る?」
「・・・はい・・」
「話せる?」
「・・・魔物が・・・街を・・」
「貴女はオーガ?」
彼女は顔を手で覆い泣き崩れながらも小さく頷いた。
セリアは群衆に向け問い質した。
「誰かオーガの里への近道を知らないか?」
1人の男がそれに応える。
「道は在るが相当険しいぞ、距離的には遠いがタブリスを廻った方が余程早
いな」
「距離は判るか?」
「310ルーク余りだ」
「ありがとう、助かった」
セリアが車の方を向くと皆降車してセリアを見詰めている。
セリアは皆を睥睨すると声を掛けた。
「行くわよ!」