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それぞれの願い

今日も朝から叩き起こされた、と言ってもAM8時半だが、少し寝足りない。

布団に潜り込んで来て、いきなり抱き付かれたら起きざるを得ない。

フランカが隣で頭を擦っているので拳骨は効いた様だ。

何度も頭をさげているユリに向かって問い質した。

「それでどうしたの?」

「昨日1人コンタクトして、話をしたんですが、渋られまして」

「渋った理由は聞いたの?」

「ええ、今はお隣の体の不自由な老夫婦の面倒を看ているらしく離れられな

いと言う事でした」

「老夫婦の症状は何?」

「2人共膝関節が痛み歩きにくいそうです」

「心配事が無くなればこちらに来ると?」

「ええ、確約しています。」

「では朝食後、銭湯で一仕事終えてからに成りますが、私が話し合ってきま

すので案内を頼めますか?」

「了解です、では後程」

ユリは一礼するとフランカを見詰めている、私もフランカを見詰めているが

フランカは私を見てニマニマしている、仕方が無いので頭をナデナデしたが

変化が無かった、暫く考えほっぺに”チュッ”してやったらシュタッと敬礼し

て出て行った、後ろ姿にブンブン尻尾が見えそうだが、流され気味な自分に

少し落ち込んでしまった。


朝食中に昨日の失敗を挽回するべく思案した結果、パンツだけは退館時、招

待券を回収した時のみ3枚販売に限定した、これで館内に打ち捨てられいく

使用済みパンツのゴミも少しは減るだろう、心置き無く出掛けられる。


ユリだけを同行させファーゴ家へと向かう、因みにフランカは置いてきた、

最近少し図に乗ってきているのでお仕置きする事にして、銭湯の雑務を言い

付けてきた、ペットに躾は必要だ。

ユリに連れられやって来たのは城下の最外周部に程近い、所謂貧民街の隣の

閑静な住宅地の一画、扉をノックすると入れとの指示が奥から聞こえ屋内へ

と入る。

「すまないね、足が悪いものだから」

ブルーノはそう言いつつテーブル席へと誘う。

テーブルの上には老夫婦が飲みきったであろう空のコップが2つ。

「少し台所をお借りしても宜しいですか?」

了承を得てユリにお茶を煎れてくる様指示をした。

ノエラが茶葉の場所を指示している。

「こうも膝が痛いとお茶を煎れるのも億劫になってしまってね、使ってしま

って申し訳ない」

「お気に為さらずに、出来る者がやる、ただ其れだけの事です」

ブルーノは穏和な表情其の侭にゆっくりと話出した。

「今セリちゃんは買い物に出掛けております。

昨日そちらに居るお嬢さんから少しは聞いております、私達はセリちゃんが

幸せに暮らせるのなら連れて行って欲しいと思っております。

隣のイルダ婆さんの看病をしながら私達の面倒も看ていたのですが、イルダ

婆さんの貯えなど既に無く、私達や町内の手伝いをしてその日の食事に有り

付く様な生活でした。

然し町内の者もイルダ婆さんが亡くなってしまえば、そうそう余裕が有る訳

では無いので、私達の面倒を看る事を、息子のファビオが結婚するまでの間

だけ、と言う約束で御願いしていたのです。

あの子はまだ13歳、せめて成人する15歳まではとファビオに話し、受け

入れてはくれたのです。

イルダ婆さんの葬儀が有ったとは言え結婚を引き延ばして既に半年、面倒を

看てくれているセリちゃんには申し訳ないが、息子達の結婚も何とかしたい

と考えていたのは、紛れも無い事実なのです」

セリアはユリがそのタイミングで置いた紅茶を一口飲むと口を開いた。

「・・・そうですか、セリはあなた方の事を1番心配している様です、お二

人が健やかに過ごされる様に成れば、セリも安心して新しい門出を迎えられ

ると思います、そして私はそれを成す事が出来るのですが、ここでお二人に

約束を御願いしたいのです。

これはセリの面倒を見て頂いた御礼も含めて、あなた方を治療するのですが

、決して他の人には口外しないで頂きたいのです、もし聞かれた場合は腕の

良い流れの医者に、気紛れで治して貰った位に留めて頂ければ有り難いので

すが、如何でしょうか?」

2人は顔を見合わせるとノエラが口を開いた。

「判りました、私達はセリちゃんが幸せに成ってくれれば其れだけで充分で

す」

「それでは、ついでと言う事で治してしまいますね」

セリアはノエラの両膝に手を付くと魔法を発動した。

目を見開きそれを見詰めるノエラにセリアが優しく語り掛ける。

「では立ち上がって歩いてみてください」

ノエラは恐る恐るたちあがり歩き始める。

「お?あぁ?!全然痛くないわ!なんて事なの!信じられないわ!」

ノエラはそう言うと普通に歩き回っている。

それに気を取られていたブルーノも自分の膝に手を充てられ我に返った。

放たれる魔法を呆然と見詰めるブルーノにセリアが声を掛ける。

「では歩いてみてください」

ブルーノも恐る恐る立ち上がり歩き始める。

「おぉ、素晴らしい!こんなに自由にあるけるとは!」

それを満足に眺めるセリアは2人に向け声を掛ける。

「私達はこれで帰りますが、セリが戻って納得したのならお2人でセリをセ

リア商会まで送り届けては頂けないでしょうか?」

「判りました、納得したのなら私達2人で必ず送り届ける事を御約束します」







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