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今日は高城へ来ている、勿論クリスタ譲への謁見だ。

目的は5つ、メインは銭湯の宣伝とパスカル領主ヤルノ・ステンマルクの情

報収集だ。

毎度ここへ来る度に思う事だが、段々とチェックが緩くなってきている。

今日などは門から部屋まで衛士が3カ所居るのだがノーチェックの素通りだ

った、流石に不味いのではないかと部屋前の衛士に聞いたら”貴女を知らな

い人はこの高城には居ませんよ”と言われた、そう言う問題では無いと思う

のだが。

他所の警備で眉間に皺を造るのも嫌なのでキッパリ忘れて部屋へと入る。

「ご無沙汰しておりました、クリスタ様」

「あら?本当に久し振りだと口調も他人行儀に戻るのかしら?」

いきなり刺の有る口調に直ぐさま理解した。

「さっきの衛士との話、聞いてましたね?」

「心外だわ、聴き耳なんて立ててないわよ?勝手に入って来ただけよ?」

セリアは溜息を吐いて言葉を続けた。

「お変わり無い様で安心しました、今日は聞きたい事が有ったので宣伝も兼

ねてお伺いした次第です」

「其れならば駆け引きに使われない様に聞きたい事を先にしましょうか?」

「何か根に持ってらっしゃいませんか?」

「そんな、セリア商会があちこち嗅ぎ回っているなんて

気にもしていなくてよ?」

「情報が速いですね?其れならば心置き無く聞く事が出来ます、実はクリス

タ様も御存知の”人では無い人”を捜しております、お心当たりは御座いませ

んか?」

クリスタは急に真面目な顔になり数瞬沈黙した。

「・・・それはニナの事ですか?」

「いいえ違います、ニナとソフィ様は当セリア商会で既に保護しております」

それを聞いてクリスタはホッとした顔を見せる。

其れを見てセリアが続ける。

「私がお聞きしたいのはパスカル領主ヤルノ・ステンマルク様の事です」

「と言う事は話の流れからして”人では無い”もの絡みですか?」

「その通りです、あの方は”最低でも1品”持っていらっしゃると調べが付い

ております、そしてその”使い途”も把握しております」

「理解したわ、それで何が聞きたいの?」

「私が今知りたいのは何故それを使う気になったか、使わざるを得なくなっ

たかですね」

「その事ならば話しても問題無いわね、私の知る限りではステンマルクス様

には子供が居ないのよ、幾ら頑張っても奥方との間には子供が出来ない、業

を煮やして側室も何人か囲ったけれども悉く子供が出来なかったのよ、それ

で最後の手段に打って出た、と言う所かしらね?」

「そこまで行くと領主本人に問題が有るとしか思えませんが?」

「私もそう思うのだけれど、本人は認めたく無いのでしょうね」

「お気持ちは判りますが」

「医者も本人にハッキリと言い辛いらしく匙を投げたそうよ」

「お気の毒ですね、然しまだ確定するのは時期尚早です、何処が本当に悪い

のか私には判定する術が有ります、私を高名な医者として領主様に紹介して

頂けないでしょうか?」

「本当に大丈夫なの?」

「本当に”種”が駄目なら早めに引導を渡した方が立ち直りも早いと思います

が?」

「それもそうね、いいわ紹介してあげます、後で紹介状を商会の方に届けさ

せます、それで後は何が有るの?」

「これは余談なのですが、ダンペール大公のお人柄とその長女に昔何が有っ

たのか、ですね」

「貴女、あちこち首突っ込んでるわね?」

「それは誤解です!私が突っ込まれた側です」

あたふたするセリアを面白そうに見るクリスタである。

「貴女のそういう所、始めて見たわ、その件も別に問題無さそうだから良い

わよ、ダンペール大公は簡単に言えば、ざっくばらんで話の通じる人よ、何

事にも動じない爽やかなナイスミドルね、長女は・・・あそこは本当なら5

人姉弟だったのだけど長男は幼い時に亡くなってるわ、長女の不注意で・・

・と、言うのも語弊が有るのだけどね」

「成る程、そう言う事でしたか、それが有るから今が有る訳ですね」

「そう言う事よ、本当は長女が悪い訳では無いのだけどね、何故あの子があ

あなったのかを解るからこそ大公も強くは言わないのよ」

「もしかするとあの子を”末永く預かる”事に成るかも知れませんが、そうな

った時はダンペール様には安心して任せてくれとお伝え願えますか?」

「そうなの!?いや、貴女なら安心ね、そうなった時は伝えておくわ」

「それと・・・」

「まだあるの?!」

「あと3件程ですが」

「判ったわ、聞くわよ、何?」

「クルトの男爵と帝都の商会に”1品”持つ者が居るのですが圧力を掛けて欲

しいのです、”使い途”が普通では無いらしいので、もしも屈しないのであれ

ば帝国に喧嘩を売る事になるかも知れません、王女とはそう言う関係には成

りたくは無いのですが」

「そう言う大事な話は先に言いなさいよね?」

「仲の良い人には言いにくいものです」

「その言葉だけでも嬉しいわ、ありがとう、でも何故そこまで拘るのかしら

?」

「今言える事は、人として絶対にしてはならない事を正しているとしか」

「いいわ、今はそれで充分よ」

「それと奴隷市場の管理をクリスタ様がしているとお聞きしたのですが?」

「そうね、管理と言う程の事はしていないけどね、それが何か?」

「全権を私にお譲り頂けないでしょうか?」

クリスタは少し逡巡した後キッパリと返事を返した。

「いいわよ、少し条件を呑んでくれれば貴女に任せるわ、そうすれば総てが

丸く収まりそうだもの」

「有り難う御座います、それとこれを」

そう言ってセリアは紙束を渡した。

「支店近くに”銭湯”と言う”お湯風呂”をオープンさせました、そこの無料招

待券です、明日から7日間は招待客のみ入れますので御来場をお待ちして居

ります、新商品も展示即売しておりますので是非御来場ください」

「風呂より新商品が気になるわね!」

「お気に召す事、請け合いです」

「是非、伺うわ!」






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