2人の落胆
これから暫くは帝都に滞在となる、トリスタで得た情報では残りの5人は総
て帝国内に居るらしい3人は民間だが、残る2人は一筋縄では行かないであ
ろう貴族階級と良い噂を聞かない商人だ、先ずは情報収集だ。
私以外のメンバーにはそれぞれコンビを組んで貰い情報収集をして貰ってい
る。
帝国に来た以上私には遣らねば成らない仕事が有る、アンジュから再三に渡
り催促されていた温泉の掘削だ、既に建屋は完成しており、お湯を曳けば銭
湯は開店出来る状態となっていた、隣はセリア商会の従業員宿舎、今私達が
泊まっている所だが、毎晩数人交代で洗浄魔法を掛けるのにはいい加減ウン
ザリしてきている。
幾ら宿舎で他人様の目が無いとは言え、乙女なのだから全員私の部屋までス
ッポンポンで来るのは止めて欲しい、女だけとは言え従業員の目は有るのだ
から。
「ティアナ君、例の件の進捗状況はどうかね?」
「え~と、オーディン様から前回上がって来た時は予定数には届いていない
と報告を受けてますが、概ね順調だそうです、こちらが現況報告書です」
ティアナの口調が丁寧に成ってきた事に満足しつつ、報告書を眺めて思案す
るニルズは溜息を吐きつつもティアナに質問した。
「この北方種族のコンタクトに手こずっている様だが打開策は有るのか?」
「残念ながら思考誘導出来る筋書きを作り倦ねている様で」
「・・・では今は意図的に下げているダンジョンの稼働率を局所的に上げた
りすればコンタクトの切っ掛けを作れるのではないか?」
「御許可頂けるのでしたら」
「そう言えばあやつの身辺にはレプラカーンが1人居ったな?」
「はい、エルザ商会にアベルと言う番頭が居ますが」
「結婚はしておるのか?」
「病弱な為に里に妻を置いて出稼ぎ中ですね」
「ではレプラカーンの里のクレア山の麓に在るダンジョンから試して見よう
、さすればアベルとか言う者も察知するであろう、あやつらは自分達の事に
なると敏感に察知するから奴にも伝わるかもしれん、まずは出現率とレベル
アップで様子を見るか」
その話でふとティアナが反応した。
「今の話で思い出したのですが、その近辺でヴァルキリーが目撃されており
ます、クバシル様の手の者だと思われますが作戦地域が被るのは宜しく無い
のでは?」
「上が何を遣っているかは知らんが被って困る様なら、最初から告知してい
るだろう、何が有ってもこちらの預かり知らぬ事だ、気にする必要も無い」
「では、その後はどの様に?」
「順次隣の所を上げ、終わった所を下げていけば自ずと流れて行くのではな
いか?」
「了解致しました、通達しておきます」
「全開では無く、程々に上げるのだぞ?」
釘を刺すのを忘れないニルズ神である。
(然しフレイヤ様は一体何をやろうと考えておられるのか、教えて頂ければ
、より協力出来ると言うのに)
そうは思ったが教えてくれない理由を思い出し1人落ち込むニルズ神であっ
た。