パスカル支店の選定
パスカルには拠点が無い、車両の席にも余裕は無い。
そう言った理由で奴隷も引き取らずに預けたままになっている、預かり料が
発生するが仕方が無い、久しぶりに商業ギルドへ行き不動産を紹介して貰お
うと思いカードを見せたらギルド長室へ案内されて”出店ですか”としつこく
聞かれた、まぁその内出すのだからそう言う事にして優良物件を紹介して貰
った、一応確認したら本当に優良物件だったのでそのまま契約し将来的には
店舗にする積もりだ、地方都市で価格も安く部屋数も多いので安物2段ベッ
ドを2部屋を使って8個突っ込んだ、風呂桶有り井戸有りで湯沸かし器の設
置で済んだのは有り難かった、拠点となるのでテーブルセットは長テーブル
に椅子10脚、1階は店舗予定なので空けておく、これで準備完了奴隷を迎
えに行く事にする。
迎えに行ってもただ連れて来るだけでは無い、洗浄に衣服の購入が先だ、但
し今回はミニスカメイドでは無い、普通の町娘風、これからさせる仕事にメ
イド服は向かないからだ。
今ここに居るのは私を含めて7人ニナ、サラ、アリエスが同行して来ている。
長テーブルの向かいには奴隷3人だ。
「先ずはそちらから自己紹介して頂戴」
セリアはそう言うと左手に座る最年少の彼女を指差した。
「モニカです」
「ニーナ」
「ソニアです」
「ソニアさん、ちょっと私について来てくれるかしら?」
セリアはそう言うと隣のベッドルームへと彼女を連れて行った。
「ちょっとそこへ座ってくれる?」
彼女をベッドサイドへと座らせ、頬を包む様に両手で押さえ治癒魔法を掛け
始めた。
淡い光の粒が纏わり付いては消え、ほんの少しの間に裂傷や腫れが消えて行
く。
「さぁ終わったわよ、包帯を外してあげる・・・何処も痛く無い?」
彼女は自分の顔をペタペタと触ってから返事をした。
「・・・大丈夫・・・です、痛くないです」
「そう・・それじゃあ向こうへ戻りましょうか?」
ソニアが席に座ると隣に座るモニカとニーナがソニアを見てギョッとしてい
る。
まるで別人の様に綺麗に顔が治っていれば当然だろう。
セリアは先程治癒したソニアへ質問を投げ掛けて行く。
「御家族は何人?」
「母と私と妹、弟2人の5人です」
「御実家はここから遠いのですか?」
「然程でも有りません」
「今時期、農家は忙しいのですか?」
「今はそれ程でも無いと思います」
次はニーナに視線を向け質問をした。
「貴女は何故摺を?」
「そんなの判り切ってるだろ、生きる為さ」
「そうではありません、何故今になって摺をしたのかと聞いているのです」
ニーナは不貞腐れる様に下を向いてボソボソと喋り始める。
「一昨年は孤児院から貰った金がまだ有った、去年は農家も豊作で棄てる作
物で食えた、今年は平年並みの作柄だ、農家も作物を棄てないから限界だっ
た」
「モニカ、貴女は孤児院を出たばかりですよね?」
「はい」
「貰ったお金はどうしたのですか?」
「同じ孤児院を出た子に取られました」
セリアは大きく溜息を吐くと同行して来た3人に指示を出す。
「ニナとサラはこの3人に護身術を中心に指導して、アリエスは諜報の時に
必ず1人は同行させて指導して頂戴、最終的にはここを拠点にして3人には
活動して貰うわ、それとサラは生活面のサポートも御願いね」
その後話し合った結果、拠点は出来たがパスカルは一旦閉めて、全員をブラ
ント支店に置き全般的な指導をする事になった。
明日の朝5時、帝都ブラントへ向けて出発だ。