クロエの苦難
セリア商会提携宿屋1階食堂AM8:00
セリアは4人を朝の鍛練の為に奴隷市場前の小門まで送り届けた後、まだ起
きて来ないクロエを紅茶を飲みつつ待っていた。
「あっ?!お早う御座います!」
クロエが寝惚け眼を擦りながら2階から降りて来てセリアに挨拶した。
「お早う御座います」
「あれ?お一人ですか?」
「ええ、他の4人は朝の鍛練に行きました」
「そうですか、早いんですね」
「そうですね、私も仕事の無い日位はゆっくり寝ていて良いと言っているん
ですが朝の静謐な空気の方が気合いが入るとかで雨でも降らない限り毎日や
ってますね」
「どうりでメキメキ強くなる訳ですね」
「それも有りますが、本人の努力無くしてはああも強くは成らないでしょう
ね」
「ハハハ、確かにそうですね、所でフランカとは何処でお知り合いに?」
「ああ、丁度朝食が来ました、私はもう済んでますので食べながらでもお話
しましょうか」
そうは言ったがセリアはクロエがある程度食事が進んでからフランカとの出
逢いから今日に至るまでの事を訥々と語って聞かせた。
「そうですか、色々と御迷惑をお掛けして申し訳ありません」
「いえいえ、良く懐いてくれて今では可愛い妹みたいに思ってますので」
「今後もフランカの事、宜しく御願い致します」
そう言ってクロエは深々と頭を下げた。
「承知しております、それと後、半刻程で出立致しますので、其れまでに
準備を御願い致します、勝手にどうかとは思いましたが準備の都合も有りま
して荷車の方は既に整理させて頂きましたので、身の回りの品とお身体1つ
で奴隷市場の事務所までお出でください、私は仕事で先に行っておりますの
で」
「判りました、後程お伺い致します」
セリアは紅茶を飲み干すと軽く礼をして立ち去って行った。
其れを見送ったクロエは朝食を食べながら昨日の失敗を思い返した。
(昨日はミスったな~完全に私の身元バレちゃってるよね~、でも仕事で絡
む訳じゃないから大丈夫か~?この御時世、他国の次官が居るなんて普通だ
よね~別に里にバレる訳じゃないし・・・気にしたら負けね・・・・)
結局気にしないクロエなのだった。
AM9:00車の周りに全員が揃っていた。
今日の助手席はお客様のクロエ、ミドルセンターがティア、左がアンジェ、
右がニナ、パッセンジャーにフランカ、ミレイユと巫女(名前はミリア今日
の朝聞いた)は御留守番だ、どの道クロエを送って来る事になるからだ。
リベリオへは奴隷市場前の小門からの街道なので、馴染みになった門番に馬
車程の速度で手を振りながら通り過ぎ視界が通らなく成ったところでレッツ
ゴー!
後ろの皆は”またやってるな”と言う顔をしている。
クロエの反応は過去最高を記録して大満足のセリアだった。
心臓バクバクのクロエが車に慣れるまで30分を要したが、更に30分でノ
ックダウンした、車酔いだ。
「叔母さん、大丈夫~?」
「フランカ・・そのおばさん呼びやめてくれる?余計に気分が悪く成りそう
だわ」
「え~だって24年も違うし~」
「24年しかでしょ!?」
そこでセリアが間に入った。
「まぁまぁフランカも今度から治癒魔法も覚えなきゃね」
そう言いながらクロエに治癒魔法を掛けている。
「おっ?!凄いですね!もう何ともありません、バッチリです!さあ行きま
しょうか!」
それから30分置きに同じ事を2回繰り返すクロエであった。
結局リベリオの宿屋へ到着したのはお昼前、クロエも3回目から20分程し
か乗って居ないのでギリギリセーフだった。
「ちょっと気分悪いわぁ~」
座り込み俯くクロエにセリアが最後の治癒魔法を掛ける。
「有り難う御座います」
「じゃあ荷車ここに置いときますね」
セリアはそう言うとクロエが下を向いている内に駐馬車場に荷車を収納から
出して置いた。
「はっ?いつの間に?」
クロエは出立する時に荷車も荷物も無かった事に今更気付いたが半日も掛か
らずに着いてしまった事にはまだ気付いていないのだった。