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お坊ちゃまは充てがわれた女の子に興味を隠せないようです

作者: 椚木梨穂
掲載日:2019/01/27

「お坊ちゃま」


 透明のクリスタルを奪い取った私の詰問に対し眼の前の少年。つい先程までクリスタルを夢中になって眺めていたがために、背後から忍び寄った私に気が付かなかった、私の主たる屋敷のお坊ちゃまは、まるではしたない行為を目撃されてしまった子供のように、後ろめたさに身を固くします。


 私の手のクリスタルの中に浮かび上がるのは、先日私がお坊ちゃまに与えましたメイドの少女の姿。


 『一族』の持つ魔法の力をその身に受けた少女は、クリスタルに取り込まれ、海中を浮遊するクラゲのようにゆらゆら力なく身を投げ出しています。その瞳は生気がなく虚ろです。


「一体これは何ですか」


「何ってその……」


お坊ちゃまはそれ以上何も言えません。なので私の方から追求することにしましょう。


「確かに私は『お坊ちゃまのしたいことは何でも』と言いました。

坊ちゃまに忠実に従うしかない、初心な娘を宛てがいました。

それはお坊ちゃまが女性へ気後れすることなく、女性の扱いを学び、お坊ちゃまの方から女性をエスコートできる。

そんな立派な紳士として振る舞えるようになることを願ってのこと。


それが何ですか。よりにもよって『標本』とは。

女子を冷たい水晶に封じ込め、物言わぬ身となったその身体を情けなくも眺め回すなどとは。

軟弱な男子のなさるお人形遊びのような、矮小な振る舞いに及ぶとは。

そんなお坊ちゃまなど見たくありませんでした」


 そう私が説教いたしますと、自分の行いを否定された目の前のお坊ちゃまは、可愛そうなくらいしょげてしまいました。そんなお坊ちゃまの様子を見て私は


「うわー。やべー。これちょっときつく責めすぎたかな。

まぁ蒐集が高じて変態趣味に走られても困るしー。これくらい言っておいても良いだろうな

あとうなだれたお坊ちゃまの背なの上覗く緊張で汗ばんだうなじ頂きましたー。今晩のおかず確定」とか内心ほくそ笑んでいるわけです。


 申し遅れました。私この屋敷でお坊ちゃまの教育係を勤めさせていただいておりますウェンディと申します。

相方を絶賛募集中ですが、目下のところはお坊ちゃま一筋。好きな事はお坊ちゃんをイジメてその可愛い反応を愉しむこと。

嫌いなものは一番が酢豚に入ったパイナップルで、その次が隣の屋敷のジメジメしたお嬢様とそれに付き従う陰険な執事ですわ。


 と、私のことはこれまでにして、今は目の前の問題に向かいましょう。


 私お坊ちゃまの教育係として常時お坊ちゃまの様子を観察しておりますが、最近お坊ちゃまが『性』を意識され始めたことに気が付きました。


 そそっかしい振る舞いをするメイドのスカートが、ふとした拍子に翻るたびその太腿を凝視してみたり。食堂で配膳をするメイドが脇でかがみ込む度、よそを向いているふりをしながらその実胸元を横目に窺っていたり。

 私が部屋から去る度、お坊ちゃまが私のお尻を目で追っていること。気がついていないとでも思っていますか。

 お坊ちゃまの欲求をとりあえず満たすことは簡単です。

 こうした屋敷の常として、主の部屋からメイドたちの私室に通じた覗き穴というものもございますから。

その覗き穴から、着替え中であったり室内に誰もいないと安心して秘めた行為を行う、彼女たちのあられもない姿を観ることが主の特権なのでございます。


 とはいえお坊ちゃまにそうした陰湿な窃視趣味に目覚められても困ります。

 まぁ時が来たらお坊ちゃまにも覗き穴の存在を教え、メイドを対象に殿方の需要を満たしてもらってもよいのですが、まずは段階を踏んで大人の階段を登って欲しい。常日頃そう思っておりますの。


 そこで手頃な娘を調達し、お坊ちゃまの身の回りの世話係の名目で配属。

 ここに来る前は村育ちで。ろくに教育も受けず、屋敷の勝手さえ分からない。だから自分が生きるため、屋敷から追い出されまいと主の言う事なら何でも聞き従うしかない娘。

 そんな彼女を寝屋で思いのまま探検。開拓し、女体の神秘を学んで欲しい

 そういう目論見でしたの。


 「あっそう。僕女の子には興味ないんだけどなー」なんて態度を装いつつ、その実眼の前にいる自分の許にやって来た年もそう違わないメイド。そのメイド自ら(予めこちらで言い含めておいた通り)「貴方のなさりたいことは何でもお申し付けください」と畏まられ、これから起こるであろう「何でも」を想像して、喉をゴクリと鳴らし、期待に身を震わせる様は、見ていてこちらもまじで狂喜させられました。


 私もお坊ちゃまがどの様な振る舞いに及ばれるか。娘を充てがった後はそれ以上関心の無いふりをしつつ。その実心の中ではぁはぁ犬のように尻尾を振って観察しておりましたわ。


 それがお坊ちゃまときたら、娘の身体を魔法で『水晶』に閉じ込め、物言わぬ娘の封じられた『水晶』を手に取り、しげしげと眺めておったのです。


 いや、「確かに何しても良い」とも言いましたよ。


 寝る時に娘を同衾させて布団の中で遠慮せず抱きついて人間湯たんぽにしても良いですわ。

 服を捲り上げさせて緊張で凝固した娘の身体を弄りお医者さんごっこをしても良いですの。

 浴場で石鹸を挟み身体を密着させ、ふしだらな泡踊りを仕込ませるのもよろしいですわね。……流石にお坊ちゃまには早いか。


 とにかく思いつくことは何でも。うはっ。考えてて自分で盛ってきたわ。

 男の子が女の子にやって見たいと思うことはもう何でも。思いのままですの。


 年の近い娘を充てがったのも。未習熟な者同士経験を重ねて行って欲しいと思っているから。寝屋の中、手を重ね合いお互いの熱くなった部分を探り合いながらとうとう初めの一歩を踏み越える。あの禁断の悦びをお坊ちゃまにも味わって欲しかったからです。

 ていうか私以外の誰か。どこの馬の骨だか知らねー女がお坊ちゃまを翻弄・導くとか思うと、私自身がやってられねーんだわ。


 それがよりにもよって標本鑑賞ですか。もっとする事あるんじゃないのー。流石にそう言いたくなります。


 で、こうしてお坊ちゃまを詰問しているわけです。


「だって可愛いんだもん。ずっと見ていたかったんだもん。

だけど主人の僕がずっと見ていたら、彼女も視線を感じて怖くなっちゃうだろうし。僕が見ている間ずうっとじっとしていないといけないとか凄く迷惑かなーと思って。

ならば時を止めてしまえば良い。気が付かれないまま眺めてれば良いんだと思って。

気がついたらこうして『力』を使っていたんだ」


 うわぁ。何これ。聞いてる途中で軽くイキかけたわ。


「可愛いから」「ずっと見ていたかったら」

自らの願望を有りの儘その可愛らしいお口から発せられるのです。


 主様の一族が持たれる魔法は、女の子を愛でていたい。その感情があって初めて始まるものなのです。

 やれ蒐集の醍醐味だとか、不動と化した少女の儚さがどうとか、美麗字句並べて越に入ってるあちらの屋敷の女主人と陰険執事に聞かせてやりたいですわ。


 おっと話がそれた。今は彼奴等との関係はどうでも良いですの。


 ちなみにクリスタルに封じられていたメイドですが、とっくに封印を『解除』しています。


 すぐそこでお坊ちゃまの告白を聞いて、両手をスカートの前に合わせてもじもじ。顔を耳の先っちょまで真赤に染めています。先ほどのお坊ちゃまの「可愛いんだもん」とか「ずっと見ていたかった」なんて言葉をはっきりと耳にしていたようですね。


 お坊ちゃまの寵愛を一身に受けたその娘の惚気けた顔を見ていたら、腹がムカついてこう言ってやりたくなります。

「て言うかお前も役に立たねーな。坊ちゃまの○奴隷を仰せつかったんだぞ。顔合わせの時に期待でぐっしょりXX濡らしてやがってたじゃないか。坊っちゃんがヘタれてるならヘタレてるで自分から攻めて行くのが筋じゃないのか。何大人しく標本になってるんだカマトトぶりやがって」

と肩を掴んで言ってやりたい思いで一杯なのですが、冷徹な教育係であるところの私は、坊ちゃまの前あくまでも怜悧な表情を維持するのでした。


 それからのお坊ちゃまですが………


 私に説教されたのが効いたのか、以降一切『標本』は作らなくなりました。


 その代り寝る時になると、決まって毎晩欠かさず娘をコチコチの、しかし意識あるマネキン人形にして、ベッドに同衾するのです。

 掛け布団の中で身体を密着させ、間近にあるマネキンの娘の顔を凝視し、しかしそれ以上は何をする訳でもなくただ身を固くし目を合わせ続けているようです。

 そして最後には緊張で疲れ果て就寝してしまいますの。


 娘の方は娘の方で、人形になった身体で一切をお坊ちゃまに委ね、念波で以って「どれだけお坊ちゃまのことをお慕いしているか」、「どれだけ自分の身体が熱くなっているか」(いや、マネキンだろ)といった恋慕と羞恥の感情をお坊ちゃまに送るのです。


 そんな2人の仕草は、まるで冬山で遭難した仲睦まじい兄妹が、山小屋の暖炉の前で身を寄せ体を温め合うかのよう。


「違う、そうじゃねーんだわ」とその場で声を大に叫びたいのですが。


 まさか私の口からお坊ちゃまに対して本来の閨の作法など手ほどきするわけにはいきません。わざわざ「矮小な」とか「物言わぬ」とか強調して言った手前、今のやり方に文句をつけるのもどうかと思われます。


 なので今は2人の様子を、寝室の陰で微笑ましく観ていることにしましょう。



 そうそう私のことなのですが。

 最近廊下を歩いていると、意識が一瞬すぅっと遠くなることが度々ありますの。


 その後は大抵スカートの中がスースーする。お尻に手を当てると感触が変。

 それで洗面に向かってスカートの中を調べると、その中にあるべき筈の下着がないのです。困りましたわ。あのレースの下着、実家から送られてきた現地の特産品で、枚数も限られていますのに。


 一体どうしたことでしょう。屋敷のメイドに対してその様な振る舞いが許されるのは主一家のみです。


 これは性に芽生え始めたお坊ちゃまが、等身大のお人形遊びをきっかけに、その行為の対象とする相手を、年長者の私にも向け始めたということでしょうか。お人形にした私から気が付かれないよう下着を抜き取っているとでもいうのでしょうか。

だとしたらもうその場で飛び跳ねて喜んでしまうのですが。


 まさか先代様。お坊ちゃまの性の芽生えに便乗して、お坊ちゃまの仕業に見せかけて悪戯を行っていたりしませんよね。

 おや。何ですか、「さっきのは私じゃない」とは。

 じゃあその前は。それ以前は。ちょっとあちらで詳しく聞かせて頂きましょうか。

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