物語
遅くなってしまって申し訳ないです
前はこの1話で終わらせようとしてましたが、あと3話くらい続きます。パーティーだけで。
「…私は夢の中で、おそらく"前世"と呼ばれるものを見ました。
前世の私は1人の女の子が物語の中で、いくつか出てくる選択肢を選び、正しく選ぶことができれば最後にある男性と恋をすることができるという、機械を使った遊びをしておりました。
その物語では女の子が何人もの男性と愛を育むのですが、その男性の中には、殿下がおられました。
殿下とその少女の出会いは、学園の中で彼女が迷子になっている時に殿下が助けるというものでした。2人はその後どんどん仲を深めて行き、私はその様子を見て怒り、彼女に罵ったり、暴力を奮ったりなどの罪に問われる行為をします。
そして最後は、私は断罪と婚約破棄をされ、お2人は将来を誓い合うというお話です」
私は一度下げていた視線を殿下のもとへ戻すと、軽く微笑んで話し続ける
「私がそれを思い出した時には、お2人はすでに出会っており、私も彼女を罵るという行為を経験しておりました。彼女を憎み、罵り、きっと長期休暇明けには暴力を奮うなどという行為を行っていたことでしょう。
私は、夢で見た通りだと思いました。全く同じ道を進み、物語を思い出さなければきっと、そのままその物語と同じ道を進んでしまっていただろうと。
だから私は、ここはあの物語と全く同じ世界だと思いました。
あの物語の中で彼女が誰かと恋に落ちないことなどなく、殿下と彼女はすでに出会い、私は彼女をいじめている。
つまり、この世界は彼女と殿下が恋をするための世界なのだと、そう考えました。
これが、私が絶対に殿下とリアトリス様が恋に落ちると思っていた理由ですわ。」
殿下は黙って少し考え込んでいる。次の言葉が殿下から発せられるまで黙って待っていると、彼は言葉を発した
「…でも、実際はそうじゃない」
「そうじゃない、とは?」
「僕が愛しているのはリアトリス嬢じゃない。そして同じく彼女も、僕に好意は寄せていない」
キッパリと殿下はおっしゃる。
でも、彼女が殿下を好きではないと何故断言できるのだろう。彼女は他の男性に好意を寄せているということだろうか
「ああ、だからと言って彼女が他の男性を好きというわけでもないけどね」
タイミングよく、彼女に好きな人はいないのだと言う。何故そんなにはっきりと言えるのか、私は問いかける
「では、何故彼女に好意を寄せている方がいないと言えるのですか?殿下に好意を寄せていないとも」
「…説明は、正直難しいかな。
昔から女性の相手をしていたからか、相手が好意を寄せてきているのかどうかなんとなくだけどわかるんだ。それは僕だけじゃなく、兄上もルークも同じだ。…だからなんていうか、経験から、かな?そう断言できるのは」
「なるほど…」
王子は婚約者を決めるためにも、幼い頃から同じ年頃の女の子たちと対面しなければならない。その中に、幼いながらも王女の座や権力を狙っている子も少なくはないだろうし、純粋に王子に好意を持ってやって来る子もいるだろう
だから"経験から"ということなのだろう、と考え納得する。正直、物語のことが頭にちらつき完全に納得とまではいっていないが
殿下は一度座り直すと、姿勢を正し再び話し始めた
「…それでね、僕が言いたかったことは、ここは現実であって夢でみた物語の世界じゃない。ということなんだ」
「はい」
「今のエミリアがこの世界をどう思っているのか、僕にはわからない。でも、これだけは言わせてほしいし、わかっててほしい
もしエミリアの言う通りこの世界がその物語の世界なら、彼女のことを"1人の女性"として見ていたはずだ。でも僕は彼女のことはそんな風に思っていないし、"仕事上で関わらなければならない相手"としか思っていない」
私は黙って頷きながら話に耳を傾けると、殿下は私の両手をキュッと握る
「それに、僕が好きなのはエミリアただ1人だ。それは絶対変わらないし、もし僕が彼女のことを好きになるのなら過去でも未来でも現在でも、君に恋することは絶対なかった。
だって、絶対にエミリア以上に好きになれる人なんていない。そう自信を持って言える」
「だから、僕は君が信じられるまで何度でも言うよ。僕が好きなのは、愛しているのは、エミリアだけなんだ。他の誰でもなく」
こういうとき、何と言えばいいのだろうか。
殿下が愛していると、信じてと言ったときから知っていた。殿下が私を愛してくれていたことを。それでも好きだと言ってくださるたびに胸が締め付けられて、私も好きなのだという感情が溢れてくる
私だって絶対変わらない。この世界が物語だろうが何だろうが、そこに殿下がいるのなら私は必ず殿下に恋をしていた。そう断言できる
私はゆっくりと考えながら返事をする
「…私は、確かに殿下の言葉を忘れてしまっていました。なので言い訳に聞こえるかもしれません、ですが私がその言葉を思い出したときからちゃんとわかっていました。知っていましたわ」
私は繋がれた両手をキュッと握り返す
「私も好きです、殿下。今も昔も未来も、それは絶対に変わりません。愛していますわ」
本当は少し不安だった。けれど、レイが『信じたいものを信じれば良い』と言ってくれたから、自信を持って目を見て言うことができた
達成感を感じながら殿下の言葉を待っているのだが、殿下が私を見たまま動かない
「…殿下?」
「…ああ、ごめん。少しボーッとしていたみたいだ…本当はまだ少し不安だったんだ。人の気持ちは簡単に変わってしまうから、もしかしたら、エミリアもそうかも知れないと思って…」
殿下の言葉につい笑みがこぼれてしまう。私も殿下も、たとえ態度で示しても、言葉にしなければ不安になってしまうのだ。同じ気持ちだったことを嬉しく思い、私は言葉を発する
「それは私もですわ。言葉にしなければ、相手の本当の気持ちはわかりませんもの。…だから、私も殿下が不安になられたときは、何度でも言いますわ。あなたが好きだと」
殿下は両手を離すと、背中に腕をまわし私を抱き締める。私は突然のことに驚きながら、両手を背中にまわす
「…あの、エミリア。このタイミングで言うことではないと思うのですが…聖女の発表のあるパーティーの日、僕のパートナーになってくれませんか」
「ええ、もちろんですわ」
読んでくださりありがとうございます‼︎
ちょっとトントン拍子に話進んでしまったかもしれない…




