プロローグ
ドサッ!!
「無様ねぇ。何であんたみたいな愚鈍な子がうちの家系から生まれたのかしら、不思議で仕方ないわ」
クスクスと私の従姉妹である万里子とその取り巻きが私を嘲笑う声が聞こえる。どうやら私はまた万里子たちの悪戯に引っ掛かって転んでしまったようだ。
もう、あまり痛さを感じない。何でだろう……?
……………あぁ、そうか。父と母がいなくなってしまったからか。
父と母の死は、突然だった。
その日は私の誕生日で、まるで何かを予兆させるように激しく雨が降っていた。
∞∞∞∞∞∞∞∞
今日は、私の誕生日だ。この日のために父と母はあれこれと準備しているらしい。
入学して一年の高校から帰る途中、母から「今日はお父さんと買い物してから帰るわね。先に家に入っていてちょうだい。」というメールが届いた。
………流石私の母だ。今回のプレゼントはどんなものだろうか、と考えているうち頬が緩んでしまう。危ない。醜態を晒してしまうところだった。
とにかく、家路を急いだ。
家に着き、ルンルン気分で父と母からの連絡を待つ私の元に一本の電話がかかってきた。
父の兄である、伯父からの電話だった。
「もしもし、今病院から電話があってな…………お前の両親が事故で死んだらしい。」
その言葉を聞いた瞬間、私の耳は全ての音を拾わなくなった。
気付いたら病院にいて、目の前に父と母の遺体が寝かされていた。
ーーーーどうしてこんなことになってしまったんだろう。もしも、私がこの日に生まれてこなければ二人は死ななかったかもしれない。
そんな考えばかりが頭に浮かぶ。
朦朧とする頭でたった一つ、両親のためになるかもしれないことを思い付いた。
母が大切にしていた、鈍く光る金色のロケットペンダント。そして、父が財布の中にいつも入れていた、私たち家族の写真。これをどんなときでも持っていようと思った。
不思議と死んで二人のあとを追いかけようとは思わなかった。
そうして、私の16回目の誕生日が終わった。