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3話
颯介に留守番を任せて、むつは晃との待ち合わせ場所に向かっていた。場所は駅のロータリーだった。時間より10分程早く着いたむつは、ロータリーを見回した。
晃はまだ、かなと思うと上着のポケットに入っていた携帯が鳴った。
「はいー?」
『お、着いたみたいだな。こっちだ』
「こっちって…?」
『えーっとなぁ、左向いて黒の車』
「あ、ヘッドライトかちかちしたやつ?」
『そうそう』
電話を切り、むつはヘッドライトをつけたり消したりをした、黒色の車に近付くと助手席の窓から中を覗こうとすると、内側からドアが開けられた。
「よ、乗れ」
「はーい、お願いします」
助手席に座ったむつが、ちゃんとシートベルトをつけるのを晃が待っている。
「お待たせしました」
「よし、行くか」
「うん。…署長ってこんなに出歩いてて大丈夫なものなの?しかも1人で」
「大丈夫じゃないだろうけど…まぁ仕方ないな。とりあえず、お前と沼井さんを会わせたら俺の出る幕は無くなるだろうしな」
「そっか」
むつは落ち着きなく、晃を見たり外を見たりしている。