2話
「おはよーっ」
「おや、おはよう。今日、入院してる依頼者の所に行くんじゃなかったの?」
むつが出社するとすでに、颯介が来ていて、キッチンでコーヒーをいれていた。
「昨日、遅刻してるから…とりあえず、顔だしてから行こうかとね」
「そんなの気にしなくて良いのに。むっちゃんもコーヒー飲む?」
「あ、お願いしまーす」
すぐに出るだろうからと、むつは隣で荷物置き場になってるデスクに鞄と上着を置いた。
「これ、どうしたの?何か割った?」
「あ、うん。昨日社長が夜来てさ。マグカップを落として割っちゃったんだよ…新しいの買わないとね」
むつの分のコーヒーを持ってきてくれた颯介に礼を言い、むつは受け取った。
「社長どんな様子だった?」
「何か元気ない…ってより疲れてる感じだったかな?ぼーっとしててマグカップ落としたって言ってたし」
「何かあったのかな?」
「さぁ?聞いても答えてくれそうにない感じだったから、聞かなかったけど」
颯介は席に戻らず、むつのデスクに寄り掛かるようにして立ち、コーヒーをすすっている。
「とりあえず…生きてるなら良いかな?何かあれば言ってくるだろうし」
「そうねぇ。心配してても仕方ないかもしれないけど…妙よね」
「妙だね」
結局、2人の心配は尽きる事がなかった。だが、山上が何も言わない以上は深く聞かないでおこういう事になったが、むつはこれから、その山上が何をしてるかを探ろうとしているとは、颯介には言えなかった。




