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2話
むつは、その違和感を山上に気付かれないようにしつつ、溢れたコーヒーを拭い、掃除機を取りに倉庫に入った。
掃除機をかけて、細かな破片を吸い上げると割れたマグカップをビニール袋に入れてしっかり口を縛り、もう1枚のビニール袋を入れてゴミ箱の上に置いた。
「コーヒーいれなおす?」
「いや…帰るよ。むつはまだ残業か?」
「ま、もぅちょっとやろうかな」
「そうか?遅くなる前に帰れよ」
山上は、ふらふらと出ていった。むつは、さっとパソコンのデータを保存して片付けもしないまま、窓から山上が出ていくのを見ていた。
後を追おうと急いで上着を手に取ったが、あまり気乗りがしなかった。結局、むつは窓から山上を見ていただけで、上着を椅子にかけた。
デスクを片付けると、窓を閉めて灰皿を片付けた。吸い殻は1本もなかった。
むつは、上着を着ると薄暗い廊下に出てエレベータに乗り込んだ。そして、いつの間にか鳥肌が引いている事に気が付いた。




