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2話
疲れた様子の山上は、奥にある来客用のソファーに足を投げ出すようにして座っていた。むつはコーヒーをいれて持っていった。本来なら臭くなるからダメと決めていたが、灰皿も一緒にテーブルに置いた。
「ありがとな…残ってたのお前だったのか」
「うん。今日寝坊しちゃったから、残業しとこうかと思って…明日はまた外出るし」
ソファーの後ろの窓を少し開けて、煙が出ていくようにすると、むつは山上の隣に座った。
「ほっ…珍しいな」
「そんな時もあるさね…あたしより、社長は?何してんの?急に顔出さなくなったから、心配してたんだけど」
むつは山上の方を見ずに、あくまでも軽い調子で聞いてみた。山上は、マグカップを持って背もたれに寄りかかり黙っている。
「まぁちょっとな…電話も悪いな出れなかったんだ」
「そう?ま、体調崩してるわけじゃないなら良かったよ」
聞いても答えて貰えそうにないと感じたむつは、すぐに立ち上がりデスクに戻った。




