2話
言った通りむつは、レシートや領収書をかき集め整理するとやり残してる仕事を始めた。いつの間にか、サボっていたようで少し貯まっている。
「カップ麺食べて終わりになるより、マシだからね…残業しますよ。また社長にも電話入れてみるよ」
颯介が帰り支度を始めていたが、むつは黙々と仕事をしていた。あまりデスクで残業する事がなく、新鮮なようで少し怖い気分になっていた。
辺りが暗くなると、廊下も薄暗くなり、いつも仕事をしている場所であっても怖い。むつは、パソコンでお気に入りの曲をかけながら、陽気に歌っていた。だが、その陽気さとは裏腹に神経は廊下や背後に向いていた。
何もないはずなのに、何となく振り向くのが怖かった。ホラー映画のあとに頭を洗ってると、後ろが怖いのと同じ感覚だった。それでも、怪異専門で仕事をしているむつは、何も居ないのは分かっている。それでも、感覚としては怖い、のだ。
だが、いつしか仕事に集中していて歌う事もなく、真剣にパソコンの画面を見入っていた。そんな時、ガコンっとエレベータの止まる音がして、むつはびくっと肩を震わせた。
誰か来た。こんな時間に。