2話
「うん、そうですね…金くらいしかこの仕事のメリットないですもんね」
「そうですね。で、沼井さんと会わせて頂けますね?って言っても入院中でしたね、病院教えて頂けたら、勝手に行きますので」
「1人で?」
「湯野にも谷代にも言えないなら、1人で動くしかないと思いますが」
晃は、悩むように黙ってしまった。その反応が意外だったむつは、眉間にシワを寄せて目を細めた。
「何か問題でも?」
「…俺が一緒に行く」
「はぁぁ?何、言ってんの?」
「1人では行かせられない。とにかく、ダメだ。…行けば分かる事かもしれないが、とにかく沼井さんに会うのに1人ではダメだ、絶対にダメだ、良いな?1人では行くなよ」
何をそんなにダメだと言うのか、むつには分からなかった。理由を知りたいが、行けば分かる事なら、聞かない方が良いのかと悩んでいた。
「むつ‼」
むつが返事をしなかったから、晃の怒ったような、大きな声にむつは肩を震わせた。
「とにかく、1人で沼井さんには会わないでくれるか?俺が一緒に行くから、な?」
「うん…分かった」
晃は、ほっとしたように頷いた。そして、むつの隣に移動してくると、そっと頭を撫でた。
「大声だして、悪かったな。昨日から…むつに悪い事してばっかりで、本当にごめんな」
むつは晃の落ち込んでるような、弱々しい笑みを見て、何かありそうだなと思ったが、今は大人しく頷いておいた。