2話
むつは、ゆっくりコーヒーを飲むときゅっと表情を引き締めた。それは、仕事の時のむつの顔で晃も初めて見るような、険しいような顔だった。
「分かっりました。とりあえず、その条件を聞きましょう」
「先ず、うちの湯野と谷代にも伝えさせて下さい。それは、すぐにじゃなく人手が必要と思った時か危険を伴う可能性が出た場合にで結構ですので」
「言うと、山上さんの信用とかが…」
「今更、無くなる程の信用があるとは思えませんので大丈夫です」
さらっとむつが酷い事を言うと、晃は苦笑いを浮かべたが、何も言えなかった。
「分かりました。その湯野さんと谷代さんに話すのは、むつの判断に任せます。それで他にも条件が?」
「条件というより、お仕事として引き受けるわけですので後は…警視正は、沼井さんからご相談を持ち掛けられたとおっしゃってましたし…沼井さんにお会いしてお話をしない事には、と思いますので。会わせてください、沼井さんに」
「沼井さんに、か…会いたくない相手なのではないのですか?」
「えぇ、会いたくありませんよ。ですが、仕事は仕事。お友達でもお世話になった覚えもないので、無償で何かをするつもりは毛頭ありません」
きっぱりとむつが言いきると、晃をくすくすと笑った。いつまでも、笑っていられ何が可笑しいのかと、むつは少し不安になった。
「いやいや、ごめんな。金次第って所なのかなと思ってね」
「そりゃそーでしょ?」