2話
「おぉ…署長室?署長さんなんだ、すごっ」
むつはどっしりとしたソファーにちょこんと座り、出されたクッキーをつまんでコーヒーを飲んでいた。
「むつ、急に来るとは思わなかったよ。しっかも、人目のある所でお兄ちゃんなんて呼んで、どういうつもりだ?」
「それは…ごめんなさい。だって、警察署なんて用事ないんだもん‼げー吐くくらい緊張しちゃって」
へへっと恥ずかしそうに笑うむつを見て、晃も怒るに怒れない。
「まぁ…そうだな。警察のお世話になるような子じゃなくて安心してるよ。ここは?冬四郎から聞いたのか?」
「そうよ。昨日、結局ね西原先輩に相談したり、しろにぃと篠田さんと合流したりで朝方に帰って来たの」
「そうか…むつにも冬四郎にもだけど、篠田君と西原君には、本当に悪い事しちゃったな」
晃は溜め息をついて、コーヒーをすすった。
「そうね…昨日の1番迷惑かけられたのは、しろにぃよ。たぶん寝ないで勤務してると思う」
「はぁ…あんな相談するべきじゃなかったな。むつにも嫌な思いさせたしな」
「ん、だから…終わったら言う事聞いて欲しいな」
「終わったら…?って事は…」
「うん、引き受けるよ。けど、けど、だよ。条件もあるけど、言って良い?」