2話
外は曇っているせいか肌寒い。秋から冬に移り変わろうとしている頃だ。肌寒くて当たり前だなと思い、むつは上着をしっかり上まで閉めるとバイクにまたがった。
向かう先は、昨日冬四郎から教えて貰った晃の勤務先だ。会えるかどうかも分からないが、行ってみようと思っていた。そして、仕事を受けるか否かの返事をしようと思っている。
もうすでに、むつはしっかりと決めていた。
晃の勤務先である警察署が見えてくると、むつは警察署内の駐車場ではなく、近くにあった駐輪場にバイクを預けた。
そして、ドキドキしながら警察署に入り、受付に立った。
「あの、宮前警視正とお会いしたいのですが」
「はい。御約束は御座いますか?」
「してません。宮前むつが来ていると伝えて頂けますか?待ってますので」
内心びくびくしていたものの、図々しい感じに出来たはずと思い、むつは空いているソファーに座った。
受付に居た警官は首を傾げつつも、その事を晃に伝えてくれたようだった。しばらくすると、急ぎ足に晃がやってきた。
むつは、心底ほっとしたように手を振った。
「お兄ちゃんっ」
抱き付くような勢いで、むつが駆け寄ると、受付やロビーに居た警官がびっくりしたように晃を見ている。
「むつ‼どうしたんだ?」
警官達のひそひそした声を気にしてか、晃は受付の警官に礼を言うとむつを連れてそそくさとその場を後にした。