1話
換気扇の止まる音がして、こつこつとヒールを鳴らして、むつがキッチンから出てきた。
そこでようやく、むつの全体像を見た颯介と山上は瞬きを繰り返すばかりだった。
「え?何?変?」
珍しく、というより初めてじゃないかと2人は思っていた。むつのスカート姿。レースのついた膝丈のスカートは、身体にフィットするタイプの物で足のラインがはっきりと分かる。
「いや…本当に驚いた」
山上がそう言うのも無理はない。
腰でリボンのついたベルトをしめて、少しゆったりとした淡い藤色のブラウスを着ていた。ブラウスをスカートの中に入れているから、ウエストラインまで分かる。それに、靴もいつもならはかない高めのピンヒールで踵部分にチャームがついている。
「むっちゃん…どこに行くの?」
「あれ?言わなかった?篠田さんと食事。この前、行けなかったからさ」
隠すつもりがないのか、それとも嘘なのかむつは答えた。そして、2人の前でくるっと回って見せた。
「変かなぁ?」
「いや、可愛い。普通に可愛い」
颯介が真顔で言うと、むつは嬉しそうに、照れたように笑った。デスクに戻り、化粧品の片付けをし、ピアスとネックレスをつけている。襟ぐりの広いブラウスから見えるネックレスは、淡いブルーだった。