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2話
「ねぇ…いちにぃってどこ勤務?」
「確か…」
勤務先を聞き、むつはふぅんと言った。それっきり、むつは口を閉じてしまったし、冬四郎も何か言うつもりはなかった。
だが、何となく沈黙に耐えられなかったのは珍しくも冬四郎だった。
「西原君とずいぶん仲良さげに話してたけど…何話してたんだ?」
「気になる?」
「ま、興味はあるな。手なんか握られちゃって、寄りでも戻したか?」
「そうねぇ…一緒に来たし、一緒に帰って行ってずっと一緒で電話にも出なかったし?何してたんだ?って所かしら?」
むつがくすくす笑った。
「何もこそまで言ってないぞ」
「電話は呑んでて…あ、紅茶って染みになるかな?洗うのすっかり忘れてたや」
「漂白剤入れたら大丈夫だろ」
「ま、いっか。そう言えば、謝らないからねって言ったのに、いちにぃ怒らなかったよ」
「そりゃ、怒れないだろ。ありゃ兄さんが悪いと思うからな」




