2話
むつはもう沼井の話をしたくなかったのか、西原とぎゃあぎゃあと関係ない話で盛り上がっていた。それを察してるのか、冬四郎と篠田もそれに時々混ざったりしていた。
篠田をホテルの前まで送り届け、西原をマンションの前で降ろした時、一緒にむつも降りていった。
「ちょっと待ってて」
冬四郎にそれだけ言っただけで、むつと西原は顔を寄せて何かを話している。冬四郎は前を向いているようで、2人をそっと見守っていた。
西原がむつの手を取って、何かを言っているのが見える。むつはゆるく首を振り、笑みを浮かべている。冬四郎は、2人を見ながら若いねぇなんて思ったりして、そんな風に思う自分は、おっさんなんだなと思っていた。
むつが嬉しげに西原に笑いかけたと思うと、西原が引っ張るようにしてむつを車まで連れてきた。そして、助手席のドアを開けた。
「宮前さん、送って頂いたうえにお待たせしちゃって、すみませんでした」
「そんな事は気にしなくていい…もう良いのか?」
「はい。むつ…おやすみ」
「ん、おやすみなさい。また…ね」
大人しくむつが乗ると、西原は冬四郎に向かって会釈をしてぱたんっとドアを閉めた。
むつが、西原に手を振ると西原も恥ずかしそうに手を振り返していた。




