2話
それから、むつも西原も黙々と呑んで、たまに箸を動かすか、タバコを吸うかで、あっという間に終電の時間が迫ってきていた。
「むつ、そろそろ…」
「うん。帰ろっか…っと?ちょっと待って」
むつがごそごそと鞄をあさり、携帯を出した。鳴っている気がしたのだ。
「電話か?」
「うん…うわ、着信いっぱい」
気付けば2件篠田から、4件冬四郎からだった。5件目の冬四郎からの着信は切れたばかりだった。
「誰からだ?」
「篠田さんとしろーちゃん…」
「ちゃんと、家に送ってない事がバレるな。家まで送るよ」
「え、良いよ。帰り電車無くなっちゃうよ?それに寝坊するかもよ?」
「寝坊なんかするわけないだろ。呑み直すか?…その前に2人に電話してやったらどうだ?」
むつはグラスを残っていたサングリアを呑み、ガリガリと氷を噛んだ。
「電話…しないっ‼送ってくれなくて良いから、もう少しだけ付き合ってくれる?」
「よし、次はどこ行くかな」
伝票をむつが取ろうとしたが、先に西原が取って席を立ってしまった。
「待って、割り勘に…せめて請求して」
鞄に携帯とタバコを入れ、忘れ物がないか確認してむつはぱたぱたと西原を追った。