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1話
「こんなもん、かな?」
立ち上がったむつは、タバコを持ってデスクの後ろ側にあるキッチンに入っていった。換気扇の回る音が聞こえてきた。
「デートだろ、これ」
「相手は誰なんですか?これだけ念入りに支度してるってなると」
「みやでも西原でもないな」
「でも、女子会かもしれないですよ。大学の時の友達と久々に会うから、とか」
「それなら、メークだけちょっとしっかりしたら良いだろ?あいつが、あんなピンクのアイシャドウなんて…」
「いつもブラウン系ですもんね」
「そうなのか?知らなかった」
むつがタバコを吸っている気配を感じながら、颯介と山上は再び小声でひそひそと話始めた。
「これは確かめないといけないな」
「相手をですか?」
「相手と行き先」
「着替えまでしてるんで、そこそこ良い所に行くって事なんでしょうか?」
「可能性としてはある。けど、いつものオフィスカジュアルでも、十分どこにでも行けそうなのにな」