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2話
「何かさ…思ったのはね。先輩が思った事ってさ、警視正も篠田さんも思い付きそうな事じゃない?篠田さん、きっとあたしらが聞く前に聞かされてたと思うんだ」
「あぁ、篠田さんだけ驚いたりしてなかったもんな」
相槌を打ちながら、西原は少しだけほっとしてタバコに火をつけた。
「そう。疲れた感じだったし、ある程度は篠田さんが調べてあるんじゃないかな?って気がしたの」
「篠田さんでも分からなかったって事か?山上さんをマークするのは、難しそうだからな」
「社長じゃなくてもさ、沼井さんから警視正を間に挟んでもっと細々と聞き出せる事ってあると思うけど」
「情報なしだったもんな。何をさせたいのか、分からない感じがするな…俺らにも手伝えって言うってなると危ない事のような気もするし」
灰皿にタバコを置くと、むつはサングリアを呑んで頬杖をついた。
「危ない事…か。社長も危ないね」
むつは、それっきり黙ってしまった。吸うのを忘れられたタバコは、根本まで灰になり自然と消えた。