61/410
2話
「うわーべったべた」
晃がシャツを脱ぐいでいる間、むつは背を向けていた。一緒に部屋に入ったからといって、手伝う気はさらさらないようだ。
「わざとなの?」
「お前、山上さん大好きなんだな。これ、京井さんにクリーニング頼めるんかなぁ?」
「頼んでも仕上がるの今日なわけないじゃん。袋につめて持って帰りなよ」
「お前が洗っといてくれよ」
「…袋、貰ってくる。貸して」
むつは紅茶の香りのするシャツやネクタイを受け取った。そして、出て行った。晃は渡されたおしぼりで、顔や身体を拭いてシャツを羽織った。素肌の上をさらっとしたシャツが滑るようで、心地は良かった。
汚い物を持つように、むつはシャツをつまんで持って京井にビニール袋を頼み、がさっと放り込んで入れ、ぎゅっと口を縛った。
「お持ち帰りか?」
「洗濯してこいってさ」
冬四郎は、自業自得だよと笑った。
着替えを済ませた晃が出てくると、絨毯に散らばった氷も紅茶の染みもなくなっていた。テーブルには、むつのだけではなく全員分の飲み物が新しく用意されていた。




