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2話
「何?」
じろっとむつが睨むと、晃が両手を上げて降参のポーズをして見せた。
「むつ、座りなさい。警視正、少し悪戯が過ぎると思いますよ。紅茶まみれになりたかったんだとしたら、趣味悪いですよ」
冬四郎がそう言い、のんびりとコーヒーを飲んだ。おろおろしているのは、篠田と西原だけだった。
「あははっ…グラスごとじゃなくて良かった。篠田君、京井さんを呼んで着替えと、玉奥さんのアイスティーを」
晃はジャケットを脱いで、ソファーに置いた。そして、しゃがむと散らばった氷をおしぼりで集めている。冬四郎と西原もその手伝いをし、篠田はフロントに電話を入れた。
「手伝いなさい」
晃に言われては、むつも言う事を聞くしかない。そもそも、自分が仕出かした事だ。
むすっとしたむつは、それでも大人しく氷を拾い絨毯におしぼりを押し当てて、紅茶を吸わせた。
「謝らないからね」
頭を突き合わせるようにして、むつが晃にぼそっと言った。晃は、篠田と西原に見えないように、むつの頭を撫でた。




