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2話
「むつ」
晃は自分の間に座り、テーブルに肘をついて悩んでいるむつの頭に手を乗せた。
「その、颯介さんとやらは盗み聞きの犯人じゃないから大丈夫」
やけにはっきり言い切る晃に対して、むつは視線だけで何故?と聞いている。
「だって、階段ダッシュしてまた戻ってコーヒーまで入れて飲んでたんだろ?無理だよ、なぁ冬四郎」
「そうだな。階段ダッシュで降りてエレベータで戻ったにしても…お前らが1階に着いた時に、エレベータ1階にあったんだろ?」
冬四郎の問いかけに、むつはその時のことを思い出し、あっという顔をした。
「って考えると、物理的に不可能だろ。高速エレベータとか、2基あるとかなら話は別だけど」
「湯野さんを疑う必要はないよ」
兄2人が交互に説明をすると、むつは納得したように頷いた。そして、ほっとした様な表情を浮かべ、すぐにしゅんとした。
「簡単に疑ったのは良くないけど…篠田君とあくまで2人で食事にって事で話をしたのは賢明だったね」
晃にそう言われても、むつは笑みを見せなかった。皿とフォークを流しに置いて、水洗いすると先に寝る、と言い部屋に入ってしまった。




