2話
「まぁ待て聞けって。お前、その変な気配がしたって言ってたけど…人間だったのか?お前がドア越しにも気付いたって事は…」
頬を膨らませて怒っていたむつだったが、冬四郎の話を聞いているうちに、だんだんと思案顔になっていった。
「あ、人じゃなかった?けど足音聞いてるよ」
「でも、京井さんもほら人の形だし…それなら西原君が追い付けないのも納得だな。彼が取り逃がしたにしても姿さえ捉えられなかったんだからな」
「京井さんって昨日の?京井さんは人じゃないのか?」
むつと冬四郎は、晃の方を向いて頷いた。晃は、ふーん?と感心したような声を出しただけだった。
「ねぇ、結局さ…仕事の依頼はするの?するなら、誰からの相談をいちにぃが受けたのか知りたい」
昨日、帰ってきてから晃は冬四郎としたような話をむつにしただけで、重要なその内容や誰からの相談なのかを言わなかった。むつも冬四郎も強いては聞かなかったが、やはり気になるようだった。
「西原先輩と一緒に嗅ぎ回って分かるなら、そうする。けど…したくはないかな。ま、した所で簡単に尻尾が掴めるとも思えないし」
むつは努めて明るく言った。
「でも、この疑心暗鬼感はどうしたら良いんだろ。颯介さんにも、昨日は篠田さんと2人でって事で話してるし…もうあんまり嘘はつきたくないかな」
むつが少しだけ悲しそうに言うと、冬四郎も晃も何と言ったらいいのか分からず、黙った。