8話
冬四郎が運転席で笑っているのを、むつは不思議そうに見ている。
「しろーちゃん分かるの?」
「まぁ、想像つくかな」
バックミラー越しに冬四郎が、西原を見ると、西原は気まずそうにぺこっと頭を下げて見せた。
「お前が気にする事じゃないよ。あんまり聞いたら、西原君が可哀想だからな」
「えーっ知りたい‼」
ぼすっと座席に倒れるようにして、もたれたむつだったが、背中が痛むのか少し顔をしかめた。
「むつは先ず怪我を治さないとな」
「そうね。けど、先に社長に小言を言ってる颯介さんと祐斗を見たいかな」
よろず屋が近付いてくると、むつはくっくっくと楽しそうに笑った。
「つか、最初の不審者って結局は何だったんだろうな?」
「源太だよ。人形だから、途中で隠れたんだってさ…あと、しろーちゃん。あたし仕事受けるって話を電話したんだけど、しろーちゃん覚えないって言ってたよね?」
「あ?あぁ…覚えてないはずないんだけどな」
「電話出たのも源太だったみたい。しろーちゃんに成り済まして署内にも行ったらしいよ…警察の警備体制も疑問だけど、しろーちゃんもちょっと不注意なんじゃないかしらね」
「気を付けます」
冬四郎が少し、しゅんとした様子で言うとそれが面白かったのか、むつはくすくすと笑った。
「はーっ帰って寝たいね」
「それって誘ってるのか?」
「西原っ‼」
冬四郎の低い声が響き、怒られたわけでもないのに、むつも一緒に肩を震わせた。