8話
そのあと、むつは晃に連れられて別の病室に行ったり、冬四郎の車で家に向かった。そのたびに、箱を持って出ていき、持って戻ってきて源太に渡しては人形に謝ったりしていた。そんなこんなで、とりあえず晃の関わる警察関係の方は片付いた。
冬四郎の車でそのまま、劇場に向かい源太と人形たちを返した。むつも眠たそうな顔をしていたが、ちゃんと館長にも挨拶した。そして、源太に渡した金とは別にきちんと、修理代も出すと言った。
源太と館長に見送られ、車に戻るとむつはすぐに眠ってしまった。後部座席の晃と西原は、むつを起こさないようにと静かにしていた。だが、しばらくするとむつは起きた。目を擦りながら、後ろを向いた。
「いちにぃ帰る?なら…説明する」
「あ、あぁ…冬四郎に駅まで送って貰ってそのまま帰るよ。流石に、自由に動きすぎてるからな」
むつは、頷いた。そして、赤信号で車が止まると後部座席に移動した。
「えーっと…まぁざっくりと分かってるかもだけど。人形が意思を持ちましてね、契約と称して人の身体を乗り取ろうとしていたのね。で、沼井の場合は奥さんがね、勝手に契約してたから、そのせいで身体が動かなかったの。けど、まぁ気のせいよね」
「あぁ、むつが目と耳がってのはそれでだな?で…お前、今は見えてるのか?」
「うん、あれはね暗示みたいなもので。思い込まされて、そうなってたみたいなんだ…源太、分かる?しろにぃの姿してた人形ね。あれがそう教えてくれたの」