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8話
むつは大きく伸びをした。西原が無言の威圧感に責められている事など、知らないむつは首を軽く回した。
「持ってきた?」
「車に積んである」
冬四郎がそう言うと、むつは頷いた。そして、顔を上げるようにして後ろを見た。まだ怖い顔をしたままの晃が西原を睨んでいた。
「何?どーしたの?」
直立して固まってる西原と怖い顔の晃を見比べ、むつは不思議そうな顔をしていた。だが、すぐにどうでも良くなったのか立ち上がると着替えてくると言い病室に戻っていった。
病室の前に立ったむつは、そっと耳をあててみた。朗らかな話し声と、笑い声が聞こえてくる。ほっとしたように、むつはノックすると部屋に入った。
「むつ」
「何よ?あたしを責めないで。まぁまぁ頬痛いんだから、これでチャラにして」
山上が何かを言おうとするも、むつはカーテンをしめて着替え始めた。着替え終えてカーテンを開けると、むつは少し恥ずかしそうに笑った。




