8話
むつは西原を促して、ロビーにあるソファーに座った。病院服のせいか、落ち着きなくむつは、裾を引っ張ったり前を引っ張ってきっちり合わせたりしている。
「で…何を隠してんのかな?」
「あら…何でそう思うの?」
「あっさりしすぎた幕引きだったしな。あの館長と何か話してたからさ…ってまぁ湯野さんかの受け売りな」
背もたれに頭を預けるようにして少しだらしなく、ずるずると浅く座ったむつは足を組んでふーむと口に出してわざとらしく唸った。
「ま、流石って感じよね。オフィスに来てる客は館長さんだよ。人形と焼けた舞台の修理代を請求に来てるはず…まぁ来てくださいって言ったの、あたしだしね」
「まぁ…そこそこ暴れたしな」
夜中の出来事を思い出してか、西原は苦笑いを浮かべつつも納得したようだった。
「ま、要約するとさ…」
珍しく三つ編みにしていない髪の毛は、そのままに左右に分けられて前に垂れている。むつは、毛先を何度も撫で落ち着きない。
「かずえさん生きてるから」
「は?」
驚いたような大きな声に、むつは慌てて西原の口を塞ぐと、病院ではお静かにと言った。
「待った、お前…え?殺したんじゃ…」




