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8話
駄々をこねつつも、藤原に引きずられるようにして連れていかれるむつを、祐斗は哀れむように見ていた。
「むつさんと社長、同じ部屋にして良かったんすかね?」
「良かったと思うよ。少なくとも…むっちゃんにとってはね」
駐車場に戻りながら、颯介は欠伸をしていた。祐斗も眠い目を擦りながらも、病院の方を振り返っていた。
「むつは、また何か隠し事ですか?」
颯介の含みのある言い方に、西原は疑問を持ったのかそう聞いたが、颯介は首を傾げた。
「ま、それは社長とむっちゃんの間の事だから…明日の検査が終わって異常なければ退院だし、その後聞いたら良いんじゃないかと思いますよ」
「明日…って今日ですよ‼俺、授業だ」
「起きれるか不安だな」
西原が、からかうように言うと祐斗は大きな溜め息をついた。
「遅刻、しないようにね。むっちゃんに怒られるから」
颯介が釘を刺すように言うと、祐斗は頷いた。帰っても寝る時間は、無さそうだった。




