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7話
かずえの手にあった札から勢いよく炎が上がると、あっという間にかずえを包み込んだ。むつは、ゆっくりと離れた。それと入れ替わるように山上がやってきて、炎に包まれているかずえの手を取った。
かずえの口が微かに動いて、最期の言葉を山上に伝えたようだった。むつはその2人の様子をすぐ横で見ていた。
ばちばちと音を立てて炎はより大きくなり、かずえは崩れ落ちるように炭とはいになった。山上は最後まで、炎に焼かれているかずえの手を放しはしなかったが、それも焼けると山上の手の中には何も残らなかった。
座り込んだままの山上を残して、むつは立ち上がると館長である男に近付いていった。そして、何事かをぼそぼそと話している。
舞台に上がってきていた祐斗は、そろそろと山上の側に寄ると膝をついてしゃがみこみ、炭になってしまったかずえに手を合わせた。




