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7話
山上の泣き出しそうな情けない顔を見て、むつはすぐにかずえの方に視線を戻した。
「勝手なのは、あたしらの方だね」
むつはポケットから札を取り出すと、かずえの手を取り、それを握らせた。
「人形のままなら、ずっと一緒に居れたのかなって思う。けど、外に出たかった。一緒に町を歩いてみたかった…人の営む生活がしてみたかった」
「沼井との生活は?」
「最悪。だから、沼井との契約を途中で止めて、あっちに乗り換えた。…顔はまぉまぁだけど…この女がずっと大切に想っていた相手だって知ったから」
「ちょっと羨ましいね。そういう想いに出逢えたって言うのは…あたしにも、いつかそんな時が来るのかな」
かずえの目から、涙が溢れるのをむつは見ていた。透明で、温かみのある物だと思った。
「腕は…本当に悪かった。ごめん」
「わたしこそ、頬痛む?」
「腫れるだろうけど、そのうち治る」




