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7話
「館長まで人形だったんだ」
むつは幕のかかっている、袖の方を向いた。老人のような男の後ろから、ぞろぞろと劇場の職員らしき人々が出てきた。男の横には、むつの見た二人禿を演じ、むつの契約相手でもある禿も居た。
「翁、かな?」
男は頷いた。
「役を演じるうちに、相手に恋をする事もある。それが、ただの役だとしても」
「この2人が、そうって事?…片方はあたしが焼き尽くしちゃったけど」
むつはちらっとかずえの方を見た。その、かずえの側に駆け寄っていく女性をむつは見ていた。受付に居て、むつに説明をしてくれ、さっき忍び込んだ時に源太を責めた女性だ。
「本当、うちの社長が報われない」
むつは、そう呟いて客席の方に視線を向けた。




