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7話
両方の腕を失ったかずえは、落ちて木に戻っていく腕をぼんやりと眺めてた。
「人になる事は出来ないし、自分の人生を後悔して嘆いても何も始まらない…それに、かずえの人生の事をあなたが嘆く必要もない」
むつは、ぱちんっと刀を鞘に戻した。
「源太は死が望みなんだって…あなたの本当の望みは何だったの?」
舞台の上に居る、むつの優しげな声が響いた。特に大きな声を出したわけではなかったが、他の人形たちにも聞こえたのか、ぴたりと動くのを止めた。
「あんなみたいな小娘に、叶えられる事があるわけないわ」
「でしょーね」
諦めたようにむつは肩をすくめた。そして、ゆっくりかずえに近付いて行くと、目線を合わせるようにしゃがんだ。
「だったら、せめて何も思う事のないように、あたしが殺してあげようか?」
「…欲しかったのは自由と終わり」
かずえではない、老人のような声が聞こえた。




