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7話
むつが明るく言うと、山上はようやく顔を上げてむつを見た。だが、すぐにかずえの方に視線を向けた。やはり、気になって仕方ないようだった。
ゆっくり起き上がったかずえも、山上の方を見ている。ぎらついた目ではなく、憂いを帯びたような潤んだ瞳だった。
「あぁ、社長は意外と女々しいんだね」
むつは日本刀を手に取って、立ち上がるとかずえの方に歩いていった。すらっと抜いた刀が、照明の明かりの下で輝いている。
山上は、むつが何をするつもりなのかとその場から動けずに見ていた。だが、かずえの前まで来たむつが右手に持っていた刀を振り上げると、ようやく何をするのか分かったらしく、慌てて立ち上がろうとした。
「むつ‼止めろ」
まだ身体に力が入らないのか、慌てたせいなのか山上は立ち上がりかけて、膝をついた。




