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7話
「それが欲しかった‼だから、山上に連絡をつけて、願いを叶えて貰っていたはずなのに」
かずえが怒ったように、目をぎらつかせてむつの頬をひっぱたいた。何度も同じ場所を叩かれているせいか、ほんのりと赤くなってきた頬をむつは押さえた。
「手に入らなかった、ってか?くそったれが、こっちは痛ぇんだよ‼」
むつがぱんっとかずえの頬を叩くと、かずえはよろめいて倒れこんだ。そして、ずるずると這うようにして山上の側に寄った。
「はぁ…聖さんっ」
かずえが山上の名前を呼びながら、山上の頬を撫でた。山上も気が付いていたのか、かずえの手に己の手を重ねていた。
「愛することは美しきかな、ってか?…都合良く寄るんじゃねぇよ‼」
むつはかずえの顎の辺りに蹴りを入れて床に転がし、山上から離した。
「むつ、何てことを…」
「てめぇもいつまでもボケてんじゃねえよ」
むつは山上の胸ぐらを掴んで、乱暴に起こすと吐き捨てるように言って、手を放した。




