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7話
「くふっ……ふ、うふふふふふふふっ」
顔を上げたかずえは、むつをじっと見つめたまま笑っていた。
「はぁ、あは、あははははっ…はぁ…そんなに出すなんてね。わたしの事がどうのじゃなくて、自分の身の為なんでしょうけど」
1歩踏み出したかずえは、右手をふるってむつの頬を張った。ぱんっと乾いた音がして、むつは少しよろめいた。
「でしょうねぇ…お互い自分勝手で似た者同士、お似合いじゃねぇかよ」
むつもお返しと言わんばかりに、かずえの頬をひっぱたいた。かずえもよろめきはしたが、痛みは感じないようだった。
「肉体よ、肉体を手に入れたのに。痛みを感じないの、感情はあるわ‼けど、それに伴った痛みも何も感じない」
かずえは再びむつの頬を叩いた。
「源太も言ってたわ、痛覚ないって。ある意味便利なんじゃねぇの?これも…痛くねぇだろ‼」
むつも先程よりも強く、かずえの頬をひっぱたいた。




