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7話
その様子を見ていた颯介と祐斗は、はっとすると人形を押し退けて舞台に上がろうとしている。
「むつってあんな、言葉使うんですね」
「荒れてた時期?があったからな」
西原が意外そうに言うと、冬四郎は困ったように首を傾げていた。だが、2人とも颯介と祐斗の方に向かうと人形を掴んで投げ飛ばしては、舞台に着々と近付いていった。
客席の方で颯介と祐斗、冬四郎と西原が人形と揉み合ってるのをちらっと見たむつはすぐにかずえに視線を戻した。
「あたしが、あんたの旦那から受けた依頼は自分の身体を元に戻す事。山上とあんたの不倫を探る事…それから、あんたがハマってるであろう宗教的な物を探ってぶち壊す事。だけど、すでに人でないなら、もうする事はないかなとも思うけど?」
「いくら?あの人はあんたにいくら出したの?」
むつは4本の指を立てて見せた。
「40?」
「400万」
「そんなに?」
かずえは驚いたような顔をし、口元に手を当てていた。しばらくは何も言わずに、そのままだったが髪を振り乱してうつむくと、肩を震わせ始めた。




