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2話
「むっちゃんと西原さんでも追い付けないって、かなり足が早いんじゃない?あ、それで俺さっき脈取られたの?」
「そう…疑ったの」
むつは小声で、ごめんねっと言った。
「うーん、俺かぁ…振り切ってここままで上がって来てコーヒー飲むのか。出来る気がしないけど」
颯介は苦笑いを浮かべて、コーヒーを飲んだ。むつも温かいコーヒーを入れ直して、出てきた。
「まぁ、いっか。で、昨日の篠田さんとのデートどうだったの?」
「あ、そうそう。まさかの遥和さんのホテルでフレンチのコースだったの。美味しかった‼けどテーブルナマーに、ね…」
「へぇ、京井さんの所か。フレンチのコースってなるとかなり高そうだな」
さっきの出来事も忘れたかのように、むつは颯介に昨日の話をした。だが、あくまでも篠田と2人で行って来たという前提でだった。
隠す理由があったわけではないが、何となく今は言わない方が良い気がしていた。そして、そうやって一緒に働く仲間に隠し事をしたり、疑いをかけたりする自分を嫌に思っていた。