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7話
「ふざけんなよ、くそばばあ」
前半部分は軽い調子で、後半部分は低い声でむつは言った。方膝をついて、山上を支えながら、むつはポケットから札を取り出すと山上の名前が掘られた人形に向かって投げた。
「山上は逃げたかも知れないけどね、最終的に自分の事を決めたのはあんただろ?現状に不満があるなら、変えようとしたか?何もしないで、上手くいかなかったって嘆くのは全ては人のせい、つーのはてめぇの無責任さが招いた結果だろうがよ」
吐き捨てるように言い、むつは人形の方を見た。札の真ん中から、ぽつっと小さなオレンジ色の光が現れたと思ったら、瞬く間にぼっと勢い良く炎が出現した。
そして、ぱちぱちと木を焼く音をたてながら人形を包み込んでいく。むつは、それをじっと眺めている。
「あぁ‼何て事を‼折角、あと少しで生身の肉体が手に入る所だったのに‼」
かずえは人形の炎を消そうと、上着を脱いでばんばんと叩いているがその程度で消えるような優しい炎ではない。
「くたばりやがれってんだよ」




